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101番目の舶ィ語
第十四話。再会と神隠しの噂
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「……それって」

「はい。『破滅の悪戯妖精(グレムリン)』です」

「グレムリン……っ??」

俺がその名前を呟いたその時。
車外から強烈な視線を感じた。
胸ポケットとズボンのポケットに入れておいた、Dフォンが熱くなっていた。
______これは……

「来ましたね……」

鋭い目付きを(フロント)ガラスの向こう側、俺達がいるタクシーが止まっている正面。
ちょうどガードレールが右に曲がって大きくカーブする辺りにそれはいた。
黒いフードを被り、そのフードはまるでお伽話に出てくる魔法使いが羽織るマントやロープみたいになっていてマントの先はボロボロに引き裂かれている。
背中には黒くて小さな羽根のようなものが見えて、フードの先は尖った耳のような形をしている。
そのフードを被ったヤツの手には刀剣のようなものが握られているが……何故だろう。
その刀剣に、見覚えがある気がしてしまう。
その刀剣……刀は……日本刀やタクティカルナイフのように見えるが違う。
鎬や樋の部分に、筋のような蛍光ブルーの発光が見られ、ただの刃物ではない感じがする。
そう……前世での俺の妹が使っていたあの武器のようにも見える。
刀剣だけではない。
初めて会うはずなのに……俺はこの子(・・・)よく知っている(・・・・・・・)ような気がするのだ。
知っている……知識ではなく、血が知っている。そんな感じがする。

(いや、待て……ありえん。ありえないだろ??
そんな馬鹿な事が……)

だが、俺の記憶は、血筋は知っている。知ってしまっているんだ。
近い______この子と俺は近い(・・)

(アイツが……アイツがこの世界にいるはずがない!
いるはずがないんだ……)

いないはずの人物。
目の前に佇むその人物を見つめていると、一之江が先に動いていた。

「……すみません、モンジ」

信じられない事に、一之江の小さな口から謝罪の言葉が漏れた。

「え?」

と尋ね返す間もなく、俺の背後の座席に座っていた一之江の姿が突然消えた。
慌てて、『破滅の悪戯妖精(グレムリン)』の方を振り向いたその時には……一之江の手に一本のナイフが握られていて、一之江はグレムリンの、そいつの前にいた。

「一之江ッ??」

静止する暇もなかった。
一瞬で一之江はナイフをソイツの胸に突き刺そうとして。

「やっ、止め……」

止めろ、という言葉が終わる前に……。
その子の姿が忽然と消えた。
まるで、何もない空間の中に引きずり込まれたかのように忽然と……。

「え?」

「っ……モンジ、後ろ??」

一之江の声が聞こえた、その時。
俺は背後から誰かに抱きつかれた。
ぶわぁと、広がる|キャラメル
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