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101番目の舶ィ語
第十三話。一之江の秘密
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さなくても立派に生き続けられるような物語に物語を変えてみせる』とかですか?」

「ああ。悪いな、一之江。今の俺(・・・)にはこんな台詞しか思いつかないけど、一之江が堂々とお天道様の下を歩いていけるように、お前の物語を俺の物語(ロア)で変えてやるよ!」

もう、俺の台詞を取られるのには慣れた。
だったら、いっそ開き直ってやるよ!
一之江に合わせてブルーになるのではなくて、俺はコイツを含めた『俺の物語』として、堂々と胸を張ればいいんだ。そうすればいつか一之江も誰かを殺さなくても生きていける。
俺自身(・・・)がそういう『物語』になればいい。
そんな決意を新たに胸に抱く俺を一之江はまじまじと見つめていた。

「貴方は真性のバカなのですね」

まじまじと見つめながら溜息まじりにそう告げてきた。
だけど、仄かに感じる嬉しさのようなものを一之江から感じて嬉しくなる。

「知ってたろ?」

「出会った時から知っていました」

一之江はニヤニヤして見つめてしまった俺の顔を見ないように逸らして、そそくさと帰ろうとした。
俺はその背中を追いかけながら、決意を胸に秘めた。
俺は正義の味方にはなれない。
だけどたった一人で戦い続けてきた彼女の味方くらいにはなれるから。
それが最強の物語『月隠のメリーズドール』を『百物語』にした、俺の覚悟だ。

「……まあ」

「ん?」

ぽつりと聞こえるか、聞こえないかというくらいの大きさの声で一之江が呟いた。

「一般人を殺す……覚悟はあります」

ほとんど囁き声、聞き取れたのかどうなのか、俺の気のせいかもしれないような小声で、一之江は呟いた。
その内容から察するに……。

「……っていう事は……」

「うっさい、ハゲ」

「ハゲてねえよ??」

と、普段通り突っ込みを入れながら思う。
______『覚悟はある』という事は。

「なあ、一之江……」

「うっさいヅラ」

「地毛だっつーの??」

「私の噂に関わるので、絶対に他言無用ですよ」

「ああ、解った」

一之江が『殺してない』という情報が出回ってしまうと、それだけで一之江は弱くなってしまうからな。だから、ずっと主張し続けるしかなかったんだ。
『どんな相手であれ、殺している』と。

______そんな彼女の『秘密』を打ち明けてもらって、俺はかなり有頂天になっていた。
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