第ニ章。妖精の神隠し
第十二話。『次は……しましょうね』
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クン、ドクドクドク……。
恋にも似た感覚を覚えて胸の高まりが増していき、そして何故か……。
______つくん、と胸が痛んだ。
「やっとお話が出来ましたね」
「ん、そうだったけ?」
「よかった。ずっとお話がしたかったんです」
彼女のその言葉により、僅かにだが記憶が戻った。
そういえば前に会った時に言っていたな。
『次は……しましょうね』と。
あれは、『次はお話しましょうね』だったのか。
記憶が曖昧でいつ見た夢なのかも定かではなかったが……良かった。
俺も彼女と話がしたかったからね。
こうして見つめ合っているだけで不思議な事に、切ないような、もどかしいような胸の痛みを感じる。
それを払拭したくなった俺は彼女に話しかけようとして……。
「ふふっ。あんまり動かないでください」
彼女の顔が近い事にようやく気付いた。
俺は今までずっと彼女に膝枕してもらっていたんだ。
頭の後ろに当たる柔らかな太ももの感触にドキドキしてしまう。
そして不意に、彼女が髪をかきあげたその時……。
何処かで感じた匂いがした。
(この匂い……つい最近、嗅いだ事があるような??)
「この匂い……何処かで……」
頭の片隅に描かれる全く、別人のシルエット。
記憶に手を伸ばそうとした時______辺りの景色が霞み始めた。
「また、眠ってしまうのですね」
その声はどこか寂しそうで、俺の頬を彼女の手が撫でた。
「次は……一緒にご飯を食べましょうね?」
一緒に食事の約束。
彼女と二人だけの秘密の約束。
それはなんていう甘い誘惑だろう。
だけど、なぜかな?
彼女の顔が寂しさと、苦痛に歪んでいるみたいに、そう見えてしまった。
彼女を不安にさせる何かがあるのだろうか?
胸の中に、そんな不安と心残りを抱いたまま。
______俺は眠りから覚めるのだった。
2010年6月2日。
俺達が無事に見事『人喰い村』から帰還したその後。
俺は気絶させられたまま、四人の手によって運び出され、キリカの家のリビングで目を覚ました。家の人がいなくてよかったよ、とキリカに安心されたのを覚えている。
その言葉を聞いた俺も安心した。
ご両親がいる時に娘が入っていたはずの風呂場から男が運び出されていたら通報されても仕方ない状況だからな。
そして、それとは別に困った問題というか、後処理がある。
タッくんとミーちゃんはキリカがしばらく預かってくれる事になったのだが、問題はリサだ。
本人の熱望により、我が家。一文字家というより、俺の側で過ごす事が決まっていた。
俺が気絶した後に。俺の知らないうちに。
というか、そういう大切な決め事をする時にこの世界で
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