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第四十五話 様々な想い
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ら守れというのか……それが紫苑には理解できなかった。
しかし、その答えはすぐに齎された……彼の腕の中で活動を停止していた銀の福音そのものによって。
(これは!?)
今まで荘厳な輝きを放っていたその機体が、突如変色したのだ。しかも、何やらドロドロとした液体のようなものが漏れ出てきている。その様子に紫苑は思わず顔を顰める。
彼にとっても忌まわしき記憶の一つ、かつてラウラ・ボーデヴィッヒを襲ったプログラム『ヴァルキリー・トレース・システム』の発動時と酷似していたからだ。
意識を一瞬だけ、戦闘中であろう一夏へと向ける。すると、満身創痍ながらも上空に停滞している彼と箒、そして海へと落ちていくエムの姿を捉えた。それを確認してホッとしたのも束の間、彼はすぐに行動に出る。未だ残る疑問などは頭の中から消え、ただ目の前の存在を救うことに集中し始めた。
何故、紫苑は敵であったはずのナターシャを助ける選択肢を躊躇いなく選んだのか。彼はもともとお人好しなのかもしれないが、決して聖人君子ではない。密漁船を庇った一夏との会話からも垣間見えるが、基本的に身内には甘くそれ以外……特にその身内を害するものには容赦がない。もっとも自分に関しては無頓着なところもあるが……ともかく、これは幼少のころからの経験や、篠ノ之束との邂逅が影響していることは言うまでもない。そもそも、彼にとっての身内とは今まで束のみだった。父親や、千冬ですらその範疇にいなかったのだ、IS学園へ入学するまでは……。
楯無やフォルテ達との出会い、そして皮肉にも紫音という偽りの姿によって生み出された平穏によって、彼の意識は少しずつ変化していった。何度も、束のためならば、例え千冬や楯無が相手だろうと、それが不可避ならば敵対もやむなしと覚悟したつもりだった。それは今でも躊躇いなく実行できるのか、もはや彼自身にもわからない……いや、紫苑はあえてその問いを思考の片隅に追いやっていたのかもしれない。
そういった意識の変化とは別に、彼はもともと悪意というものに敏感だった。
彼が純粋に紫苑として姉と共に生活していたころ、自分に向けられる視線や感情は決して好ましいものではなかった。たとえ相手が表面上は取り繕っていたとしても、その裏にある侮蔑や嫌悪、敵意といったものを感じ取ってしまう。
だからこそ、純粋に自分だけを見てくれる束に懐き、事情を知らぬとはいえ自分を慕ってくれる学園の生徒たちにまで、戸惑いつつも愛着を持ち始めてしまっているのだ。
ではナターシャはどうかというと、実は紫苑は戦闘中そういった感情は一切感じていなかったのだ。
エムからは明確な敵意と殺意を感じたが、銀の福音……ナターシャからはそういったものが全く読み取れなかった。暴走している、とは聞いていたので意思に反してい
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