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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
エピローグ 赤い女
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は、ジロリとルイズとキュルケを睨み付けた。小さく傾けた顔につられ、後ろで一つに縛った黒髪がサラリと動く。
 ビクリッ、とルイズたち二人の身体に震えが走った。
 まるで大型の肉食動物に見つかったかのように小動物のように怯える二人。
 近くにいるタバサも動けず様子を伺うしか出来ない。
 見るからに荒々しい雰囲気を身に纏った女性は、一歩一歩ルイズたちに近付いてくる。女性の足が一歩進むたびに、ルイズたちは面白いように身体をビクつかせる。女性が歩く度に翻るトレンチコートの赤が、二人の目には血に染められたかのように感じられた。
 遂に手を伸ばせば届く程の距離まで近づいた女性は、固まるルイズたちを観察するようにじろじろと見始めた。
 
「あ、あの、何か?」

 特に確かめるように顔を念入りに見つめられていたルイズが、もう我慢できないとばかりに声を上げた。
 ルイズの声に、女性の視線がピタリと止まる。

「―――」

 綺麗―――と、ルイズは改めて思った。
 ルイズの周りには様々な美しい女性がいるが、それに引けを取らないと美しさであった。強い意志が宿った瞳からも感じられる、確固とした己がある大人の女性とルイズは感じた。赤を基調とした服と、漆黒の髪に白い肌が映える。強さと美しさが交わった刀剣のような凛とした美しさ。

 ……あ、れ?

 思わず女性に見蕩れていたルイズだったが、不意に既視感に捕らわれる。
 何処かで、それも最近見たことが、ある?
 これだけの美人をそうそう忘れる筈がないにも関わらず、どうも直ぐに思い出せない。
 最近色々と立て続けに起きているとは言え、何かが邪魔をして上手く思い出せないでいた。
 心の中で唸り声を上げて思い出そうと頭を捻っているルイズに、ルイズから顔を離した女性は、周囲をぐるりと見渡した。

「……あいつ、何処にいるのよ」

 えっ、と声を上げて思考から現実に引き戻されたルイズに向かって、その赤い女性はルイズやキュルケ、タバサの視線を一身に受けながら顰めていた顔を横に逸らした。


「―――あいつが何処にいるか聞いてるんだけど?」
「「「―――え?」」」 


 明らかに不機嫌な声と態度。
 それでもハッキリと感じ取れる焦燥感と期待感に、思わず聞き間違いかなと声を漏らすルイズたち。
 そんなルイズたちの様子にイラついたのか、赤い女性は白い肌も赤く染め上げながらルイズに指を突きつけた。

「だから衛宮士郎は何処にいるのかって聞いてんのよっ!!!」

 純情な少女ならば泣き出してしまいそうな剣幕を見せる女性に、ヨルムンガンド以上の命の危機を感じルイズたちは震え上がる。
 その瞬間、命を危機を感じルイズの脳裏に流れた一瞬の走馬灯が、一人の女性の姿を映し出した。


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