第十四章 水都市の聖女
エピローグ 赤い女
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いく。
「ッ、な、なにっ?!」
「いっ、いったぁ〜……何よこの爆発? ルイズあんた何かした?」
十数メートルは吹き飛ばされながらも、幸運な事に大した怪我もなかったルイズたちは、痛む身体を庇いながらゆっくりと立ち上がった。
「―――何よ、これ」
「これは……凄いわね」
もうもうと煙が周囲を覆う中、乱れた髪を抑えながら振り返った二人の目に映ったのは、上半身を綺麗に吹き飛ばされて立つヨルムンガンドの姿だった。残された下半身が、神社の鳥居のように立っている。
「怪我は」
ぱたぱたと駆け寄ってきたタバサがルイズたちに声を掛けるが、応えることなくルイズたちはヨルムンガンドの残骸から目を離せないでいた。無視された形となったタバサだが、気にすることなく二人の身体をざっと見て怪我がないことを確認すると、二人と同じように下半身だけとなったヨルムンガンドを見上げた。
「あなたの“虚無”―――ってわけじゃないわよね」
キュルケが隣にいるルイズに顔を向けず尋ねる。ヨルムンガンドに襲われた時、ルイズに呪文を唱える時間などなかった。そして、魔法を発動させるような仕草も見られなかった。それを知りながらも、キュルケは確かめずにはいらなかった。こんなふうに、ヨルムンガンドの下半身だけを残して破壊する術を持つものなど、キュルケの知る中には精々二人しかいない。
「……違うわよ。それに、これは“エクスプローション”じゃない」
「高速で何かが飛んできた」
目を細めじっとヨルムンガンドの残骸を見つめるルイズの横で、タバサがポツリと呟いた。ルイズとキュルケの視線が一斉にタバサに向けられる。
ルイズがヨルムンガンドに襲われた時、比較的遠くにいたタバサはその瞬間を俯瞰的に見ていた。あの瞬間、ヨルムンガンドの前方から五つの光が飛んできた。朱、蒼、翠、黄、白と、まるで虹のように光る帯を伸ばしながらヨルムンガンドへと向かったそれは、“反射”が消えているとは言え分厚い鎧を容易く打ち砕いた。
「何かって……なら―――」
「こんなのが出来るのなんて―――」
二人の脳裏に同じ人物の姿が浮かぶ。
その時、ざっと砂を踏む音が響き、二人は背後に人の気配を感じた。
チラリと見えた赤い影が、頭に浮かんだ人の姿を更に鮮明に造り上げる。
「「シロ―――」」
同時に背後に振り返り、危機を救ってくれた愛する人へと勢い良く飛び込もうとした足は―――。
「「・・・・・・誰?」」
ピタリと止まる事になった。
そこには一人の女性が立っていた。
二十代前半ぐらいだろうか、切れ長な目を細め、晴れ渡った空のように、底が見えない泉のように深い青の瞳に剣呑な光を灯らせたその女性
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