第十四章 水都市の聖女
エピローグ 赤い女
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れているかのような安心感を抱かせるそれは、胸の奥をざわつかせながらも落ち着かせてくれる不思議な気持ちにさせる。
何時もではないが、こういった非常時にそういった雰囲気を士郎たちは身に纏っていた。
見方には安心感を与え、敵には恐怖を与える。
きっと、ああいう人を“英雄”っていうのね。
ふっと、思わず口元に笑みが浮かんだキュルケは、手の平で口を覆うと口元を揉みほぐした。
「ギーシュたちの怪我はいくら水魔法で治したからって完全に完治ってわけでもないし、今のあたしたちにアルトの事に出来る事なんて何もないわよ。報告も兼ねて今後の予定で―――」
口元に浮かんだ笑みを揉み消したキュルケが、未だに迷っているルイズに声を掛けようとし―――瓦礫の丘が弾け飛んだ。
「「「「―――ッ!!!???」」」」
火山が噴火したかの様に、瓦礫の山が吹き飛ぶ。溶岩や煙の代わりに山の下から現れたのは、顔が大きく歪んでいるが手足が未だ健在のヨルムンガンドだった。もうもうと立ち込める土煙。未だ状況が把握できていないのか、大半の者がただ呆然と瓦礫の下から立ち上がったヨルムンガンドをただ見上げていた。中にはルイズの保護や攻撃に意識を向けていた者たちもいたが、戦闘終了直後故にか、意識の切り替えが出来ずどうにも動きが鈍かった。頼りのギーシュたちは治療したとはいえ戦闘が可能な状態ではない。
鈍く光る単眼を明滅させながら、咄嗟に杖を向けるルイズへと手を伸ばすヨルムンガンド。
その手が硬く握り締められていた。
ルイズは咄嗟に杖を向けるが、詠唱する時間はない。キュルケがルイズの手を掴み逃げようとするが、ヨルムンガンドの手の方が速かった。このヨルムンガンドの目的が捕獲であったならば、キュルケの動きの方が速かっただろう。しかし、ルイズに向かって伸ばされる手の疾さは明らかに捕獲を目的にはしていなかった。
「ルイズ―――ッ!!」
掴むのではなく殴りつけるための動き。
風圧がルイズとキュルケの全身を叩く。
キュルケに手を引かれるルイズの顔が背後に向けられる。
「―――ぁ」
か細い声が漏れる。
視界を硬く巨大な拳が目前に。
まるで巨大が岩壁のようだ。
ルイズの思考に“死”が過ぎる。
「し―――ろう」
溢れた言葉は、救いか、願いが込められていたのか、その声は―――
「―――Anfang」
爆音を持って答えられた。
ドドッズゥゥウンッ!!
爆音が響き、爆圧が周囲を吹き飛ばす。吹き飛ぶヨルムンガンドと吹き飛ばされるルイズとキュルケ。爆風に背中を押され五、六メートル吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がって
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