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剣の丘に花は咲く 
第十四章 水都市の聖女
エピローグ 赤い女
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 ヨルムンガンドの残骸が広がり、土煙が未だ舞い上がる中、聖堂騎士達ルイズの護衛の者達が後処理に走り回っている。その中に峡谷の崩落により出来上がった小さな丘ほどある瓦礫を前にポツンとルイズは佇んでいた。吹き寄せる細かな土混じりの風に顔に掛かるのも構わず、ルイズは八体のヨルムンガンドが埋まっている瓦礫の山を見つめ続けている。硬く口を噛み締めたその顔からは、苦しげな様子が見える。疲れたようにルイズは視線を自分の足下へ移動させると、寄り添うように隣に立っているキュルケに顔を向けないまま声を掛けた。

「……生きてる、かな」
「普通に考えたら生きてはいないと思うけど……」

 「あなたはどう思う?」とキュルケは聖堂騎士たちに指示を出しているタバサに顔を向けた。

「分からない。ただ、油断はしない方がいい」

 チラリと瓦礫を見上げたタバサは、直ぐに顔を戻し治療を受ける水精霊騎士隊の下へと歩いていく。ルイズとキュルケの視線はタバサの後ろ姿を追っていたが、直ぐにどちらともなく溜め息を吐くと互いに顔を見合わせた。

「一応これで任務は終了となった訳だけど、でこれからどうするのつもり? 一旦アクイレイアに戻る?」
「そう、ね。でも、アルトはまだ戦っているだろうし……」

 顎に指を当て一つ唸ったルイズは、国境付近の上空で行われているだろう戦闘に思いを馳せた。心配気な様子を見せるルイズに、乱れた髪を手櫛で整えていたキュルケが苦笑いを浮かべた。

「あ〜ダメダメ。あの人の事をあたし達程度が心配しても意味がないわよ。それにあの人の事だから、もしかしたらもう既に終わってるかもしれないし」
「流石にそれはないんじゃない?」
「さあ、それはどうかしら……」

 隣にいるルイズにも聞こえない小さな声で呟く。
 眉間に皺を寄せていたルイズが思わずといった様子で小さく笑う姿から顔を背けたキュルケは、色々と常識外れの片割れの事を思い返す。キュルケは別に冗談を口にした覚えはない。それ程までに彼女は、彼女たち(・・・・)は別格なのだ。
 キュルケはこれまで今まで生きてきた十八年の間に、様々な人間を見てきた。それはその奔放な性から多くの男と関係を持ってきたため、数多くのトラブルに見舞われた事に端を発する事が多かった。結果、キュルケは多くの男と、そして女を見る事になった。その数と種類について、自慢ではないが(本当に自慢ではないが)キュルケは自信がある。
 その中でも、アルトリアと士郎の二人は別格であった。
 二人について考える時、その桁外れというか常識外の戦闘力にばかり目が行くが、キュルケは二人が纏う雰囲気とでもいうか言葉に出来ない気配のようなものについてにこそ興味をそそられていた。巨大な竜が傍にいるかのような圧力を感じさせながら、同時に父母に見守ら
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