否定に傾く二人の
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キコキコと椅子で船を漕ぐ。
袁家征伐に出立する前、官途の一室で、明は暇を持て余している子供のように桂花の隣で揺れていた。
「袁家が憎い?」
ぽつりと尋ねた明の表情は普段と変わらぬモノ。瞳に輝く黄金のそこには昏い暗い憎しみの炎が燃えている。隣で目を細めた桂花は舌打ちを一つ付いて鼻を鳴らした。
「否定はしないわよ。本当は袁しょ……袁麗羽だって詰ってやりたい」
「……そっか」
別段深い意味はない問いかけである。人それぞれ憎しみの度合いも深さも、向け方も違う。戦っていた環境が違うのだから、桂花と明の憎悪が向く先に相違点があるのも当然であろう。
不機嫌を前面に押し出している桂花を見つめて、明は小さな笑みを零す。
「ふふっ……うれしっ♪」
「なんでよ?」
「簡単に許すような人間じゃなくて」
「……何よそれ」
腕を頭の後ろに、明はにやける笑みで赤い舌をぺろりと突き出した。
「あたしは憎しみって感情をすっごく沢山見てきたし受けてきたんだけどね……大切なモノの大きさに比例してその感情って燃え上がるんだよ。今回の白馬義従とかその最たるモノで、きっとそれが人として正しい。割り切れる人間なんてそうそういないし♪」
例外は目指すモノが遥か高みにある月や華琳、そして真っ直ぐに狂っている彼。通常ならば大小の違いはあれど憎しみを持つのは人として当然。
「そうね……口ではなんとでも言えるのよ。華琳様がそれでも抑えろっておっしゃってくれるから私は線引きを超えないだけ」
「うん。だからさ、桂花が夕を想ってくれてたんだなーって感じてすっごく嬉しくなっちゃった♪」
ぐ……と言葉に詰まった桂花はみるみる内に顔を赤く染め上げていく。
ふいと目を逸らし、憎らしげに眉を顰めた。
「いい? 今日のことは絶対に内緒よ?」
恥ずかしくて目を合わせることは出来なかったが、一人で生き残ってしまった友達に、せめて自分の本心くらい話しておきたくて言葉を紡ぐ。
「……どこぞの馬鹿の話。いっつも突撃だーって突っ込んでばっかりのくせに、他人の為に怒ったり変なところで一本気な奴がいる。今の私は……きっとその馬鹿と同じなんだわ。人の為に怒れるって……きっとこういう感じだと思うもの」
キョトンと目を丸めた明は、意地悪な笑みを浮かべて桂花の頭を撫でやった。
「ふーん……認めてないと喧嘩出来ないっていうけど、桂花はその馬鹿のこと認めてるんだー」
「あんな単純馬鹿のこと認めてなんかないっ! 将の代表の立場のクセに兵法も諳んじられないし、策を無視して本能だけで突っ走るし、予定をぶち壊すし――――」
「へー、素直じゃないねー?」
「……っ……ぐぬぬ……あんたってホント嫌なやつだわっ」
「それ、あたしにはほめ言
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