否定に傾く二人の
[9/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に彼女達を操る夢を。
その愉悦だけが、彼の生き甲斐。
目の前の男が我欲を持って、この世界をかき乱せれば少しは愉悦を感じられる。
「――――夢はでっかく持てばいい。俺はてっぺんに立ちたいなんて思わねぇが、全てを裏で操るのが夢だった。
てめぇが天の御使いってんなら、天を塗り替えるってんなら……せめて人間の一番上に立ってみやがれ。異物が作る世界でも……クソアマが支配する世界よりは俺にとっちゃ一寸マシだ。
逆にだ……クカッ、この大陸に脈々と受け継がれてきた漢の血に、本物の異物が混じって乗っ取られるなんざ……堪らねぇなぁおいぃ」
ドクン……と秋斗の心臓が跳ねた。
力が抜ける。自分がズレるような感覚が襲い、頭に白が広がって行った。
――……あぁ?
景色が見えた。
幸せそうに笑う民や臣下達。
幸せそうに微笑む女達。
“自分”は玉座の上。
三人の王が笑っていた。
褐色の肌に蒼瞳の戦乙女。
ふにゃりと笑う桃髪の仁徳の君。
そして……二重螺旋を楽しげに揺らす覇王。
英雄の名を持つ少女達は、きっと“自分”に恋をしている。
見つめる視線は愛おしさを込めて、少ない時間であろうとも会える喜びを噛みしめていた。
三人の王が誘うように手を伸ばした。
そして“自分”が腕を伸ばす。
“白く輝く衣服を着た”その手は……傷一つ無く……
――なんだ、これ?
自己乖離に慣れている彼は、その光景すら客観的に見やっていた。
暖かい視線は嬉しいモノのはずなのに……彼にはマガイモノにしか感じない。
置かれる立場は男であれば羨むはずなのに……下らないと思ってしまう。
其処は暖かかった。誰の涙も無い笑顔溢れる世界。
故に、自分の住む世界では無い。
――俺が演じるモノは黒麒麟で……皆に好かれる“天の御使い”なんかじゃあ……ねぇよ。
この景色が分からずとも、この結末で世界を変えられるとは思えなかった。
彼女達を救えても、ナニカが救われない……と。自分は幸せでも、ナニカが幸せではない……と。
彼は、頭の中の光景を拒絶する。首を振らず、瞬きを二度。
目の前には悪辣な男が一人。白昼夢に捉われていた時間は一瞬だったらしい。
「は……そんな願いを持つのは男らしくていいかもしれないが、野心も欲も俺にはねぇのさ」
嘲りを返された郭図の笑みが苛立ちに変わる。
「自由に動き回れないのなんざ御免だし、俺が見たいのは覇王の作る世界なんでね」
彼だけに見えた景色は、今が幸せなマガイモノ。
――悪を駆逐するだけで辿り着いた最効率で、覇王が諦観に塗れた異端世界。それだけは、あの子の為にも、殺した奴等の為にも、繋ぐ想いの
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ