否定に傾く二人の
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なに上手く行くはずなど無いのだと。
足りなさすぎる英雄達。短期決戦で決着をつける戦が遣り易く。豊富な糧食支援と有り得ない食糧の貯蔵量。地方都市の豪族でさえ、英雄たちを裏切ることが少ない。
確かに華琳や智者、名のある英雄達の能力は飛び抜けて高く、内政にしても軍事にしても、彼女達の努力の賜物であるのは間違いない……が、それでも五年十年と掛からず此処まで来れた事は異質に過ぎる。
――きっとお前と……あと劉表くらいか。張勲は少し毛色が違うだけだが、ドロドロの乱世を作れるような英雄はそれだけ。後はお前の言うように……優しくて甘い人ばかりだ。
自分にとっては好都合で、民にとっても乱世の収束が速い事ほど嬉しいことは無い。
彼の上に立つ彼女達にとっても……。
――ああ、そうか。そういうことか。
そこまで考えて、脳髄に稲妻が走った。
――この世界の主役は……あいつらなんだ。
彼はこの世界の人間では無いから、一歩引いた視点で物事をいつも見てきたから思い至る。
性別が逆転した英雄たちの世界。彼女達が望む優しい世界であって、郭図が望み、秋斗が恐れる現実的な世界では無い。全てが歪に捻じ曲げられている。
傍観者の見方をする彼は、自分を舞台で踊る道化師としつつ、この世界を物語のように見ていた。
――世代交代する間も無く収束させられる早回しの乱世……此れの何処が三国志とちょっと違うだよ、腹黒め。ぶっ壊れてるにも程がある。
内政に通常は幾年掛かる。軍事にも通常は幾年掛かる。一つの戦でさえ年単位で時間が掛かる事が多い。たかだか数年で黄巾から官渡まで終わるはずがない。
この世界は名のある者達にとって、余りにも都合が良すぎた。
「はは……イカレてるな、確かに」
互いに考えている事は別であったが、その言葉を受けて同意ととった郭図の笑みが深くなった。
「クカカ、だから言ってやる。狂ってるのはこの世界だよ。てめぇの効率思考だけは俺も評価出来そうだ、偽善者で大嘘つきのクソ野郎じゃなけりゃあな」
ペロリと唇を一舐め。最後に面白いモノを見つけた、と。
「“天の御使い”。てめぇは何の為に生まれてきやがった? それでいいのかよ? クソアマ共に支配されたままで……なぁ?」
郭図の胸には、不思議と心躍るような感覚があった。
従う事は吐き気がするくらい嫌。
しかしながら自分よりも頭は悪くとも、自分が蔑む輩が上に立つよりもマシだと思った。
「お前が大陸を支配すりゃいいじゃねぇか。めんどくせぇ事してんじゃねぇよ。てめぇは俺と同じで耐えてへりくだるのなんざ屁とも思ってねぇんだろ? 化け物だろうと、せめて男ならぁ――――」
郭図は夢を見た。
見下される屈辱の果てに、自分が好きなよう
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