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乱世の確率事象改変
否定に傾く二人の
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ながら、内心で桂花は思う。

――そうよ。失わせたからこそ、その分幸せにならないと夕の想いは救われない。代わりになるつもりはないけど、私がバカ明のこと……これからもっと幸せにしてあげるわよ。勿論、夕を越える軍師としてね。

 大切な想い出は宝物。心の引き出しにしまって、自分をカタチ作る力となり、確かにあった事実として心に生き続ける。

 悪戯を仕掛けつつ、いつも通りに挑発を繰り返しながら、内心で明は思う。

――この一度きりの人生で精一杯幸せにならないと……ね。何処かで死ぬとしても、秋兄とか華琳様の作る世界の為に死ねるのなら悪くない。あたしは……幸せだ。でも欲張りだからもっと幸せ探してもいいよね。勿論、心の中のあなたと一緒に。

 失った少女を想いつつ、後悔は其処には無かった。
 彼女の望んだ世界に生きることが今の全て。
 明日を見て、明後日を見て、未来を見て生きていく。大切な誰かの笑顔をその胸に抱いて。



 †



 闇の中、蝋燭の光だけがぼやけて映る地下牢。見張りの兵士によって厳重に管理された檻が一つ。
 許可なく誰も近づけるなと言われている其処には、一人の男が閉じ込められていた。
 明と夕を殺そうとした袁家の重鎮――――郭図。
 ふと、郭図は近づいてくる気配に気づく。この時機で来るなら紅揚羽か曹操か……いや、きっともう一人いると思い至って馬鹿にするように鼻を鳴らす。
 視界に入った人物に、やっぱりなとつぶやいて興味なさげに視線を送り続けた。

「……お前が郭図か」

 さして興味を持っていないような……でありながら、相手を推しはかるような声音。郭図としては、戦場で張り上げていた声を聞いていたことと、手に入れていた情報から疑問を浮かべることなく。

「クカカッ……大陸の英雄であらせられる黒麒麟様がわざわざ俺様なんぞに何の用だぁ、おい?」

 嘲りは侮蔑から。同じ男としても、その在り方にしても、郭図はその男の事を見下していた。

「別に大した用はねぇよ。少し話でもしようと思っただけだ」

 言いながら、秋斗は檻の前にどっかと腰を下ろした。
 黒の瞳は真っ直ぐに郭図のことを射抜く。ある程度人間を見てきた郭図であれど、それだけでは彼の思考を読み取ることは出来ない。

「おいおい、勘弁してくれよ。俺は化け物と話す言葉は持ち合わせちゃいねぇんだ。それに俺が辿った乱世の余韻も、てめぇが居たら茶番の後のクソったれな不快感にしかならねぇ……失せろ」

 さらに言えば、徐州の戦から人外と認識を置いた秋斗と話をするつもりは無い。
 完全なる拒絶。
 人間でないモノに対する恐怖もあるが……一番は、人間を逸脱したモノが人の社会に関わった事への蔑み。
 郭図は確信している。
 徐公明と
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