否定に傾く二人の
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葉だよ、桂花っ♪」
やりにくい……心底そう感じる桂花ではあったが、撫でられるに任せている辺りこれ以上の抵抗はしないらしい。
じと目で見た。口を尖らせて見上げると、先ほどまでの暗い光の無い黄金の相貌が迎えてくる。
「あんた、もう泣かないの?」
「桂花はもういいの?」
「……私はいい。もう、十分泣いた」
「そりゃあんだけ泣けば……ねぇ?」
「なんか文句ある!? バカ明!」
「なーんにもっ♪」
声を一段跳ねあげて、明は桂花に抱きついた。
「ちょっ、す、すぐに抱きつくクセ直しなさいよ!」
「い、や!」
抱きしめながら思い出すのは、合流してからの夜に散々明の前で泣いていた桂花の姿。
救いたくても救えなかった。
自分の力が足りなかった。
『あんたのせいなんてもう言わない……私があの時に少しでも気付けたら良かったっ』
“もしやり直せるのならあの時に戻りたい”
そうやって後悔の気持ちを涙と共に吐き出して吐き出して……桂花は明け方になるまで泣き続けていた。
それでも、今はもう割り切った。
今は乱世。友を失うことも、戦友を失うこともままある。
通常であれば、幾日、幾か月、幾年と沈むこともあろう、塞ぎこんでしまうこともあろう。
しかし桂花は間違えない。
どれだけ大切であろうとも、塞ぎこんで“大切な主の脚をひっぱる”わけにはいかないのだから。
優しくて厳しい覇王が望んでいるのは、絶望悲哀に暮れようと、大切を失った世界で最大限の幸せを掴み取ることなのだから。
それに、夕を自らの手で殺しても想いを繋ぐと誓っていた明を前にして、負けん気の強い彼女が立ち直れないはずなどないから。
「……夕の代わりになんかならないわよ?」
「……分かってるって。あたしがこうしたいだけー」
「ならいいけど」
人形のようだった明が、自分を代替として置いているのではないかと訝しんでいる……わけではない。
ただ、泣いていない彼女の心を思いやって言ってみたかっただけであった。
「ねぇ、桂花」
「何よ?」
「あたしはやっぱり……“もしも”なんて、やだよ」
「……例え夕を助けられるとしても?」
「うん、それを考えることは別にいいかもしれないけど……願いとしては持てないや」
思い出の中で一度だけ聞き、今回も絶望に耐えられなくて零した弱さ。
それに対して紡がれるのは否定の言葉。桂花の後悔の向け方を、明は否定する。
「あたしに生きてって願った夕は此処にいる。そのおかげであたしは今を生きてる。それにみーんな今を生きてるじゃん? 後悔で救えても、想いで救って貰ったあたしは此処まで生かしてくれた人の心を嘘にしちゃう。あたしは夕の心も、あたしと夕の為に怒ってくれ
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