暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
月下の死闘(U) 〜舞い踊る剣舞〜
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把握していたので、適切に対応する為の強化と術式を施した。

「ふぅっ……ふぅ……」

 大きく呼吸を二回。許されるときになるべく酸素を取り込んでおく。
 出来る事ならイリヤに次の手を用意される前に終止符を打ちたかったが、彼女の周囲には既に使い魔が展開されていた。

 流れるような美しい銀髪。その一本から使い魔が形成される。
 見れば盾を打ち砕いた拳にも、糸のように髪が一本絡みついていた。

 不明だった使い魔の材料は、彼女の髪。

 たかが髪一本で……とも思ったが、女性の魔術師は髪を媒体にすることが多い。
 女性は特に伸ばしていても不自然はなく、日々の手入れにおいても魔術的な処置を施し易い。
 自らの肉体の一部は強力な魔術の媒体になるという基本、使い魔はそもそも術の成立に肉体の一部が必要不可欠。

 アインツベルンが最強と自負するほどの魔術師ともなれば、その髪だけで規格外の使い魔を作ることも造作無いということだ。

「まさかな。あんまり多用してると禿げるぞ」
「そう思うのなら、今すぐやられてくれてもいいのよ?」

 今度は先程までと同じく四体。
 剣型が二体と盾型が二体。さっき破られたことを考慮して数を倍にしたのか、現状操れる限界数が四体なのか。
 劇的に強度を向上させることは無理だろう……術式構成は変更しているかもしれない、相応の警戒はしておくか。

「安心しろ……アインハゲルンでもイリヤは魅力的さ」
「──────」

 ヤバイ、目がマジになった。
 というより文字通り遊んでいたのであろう気配が全て掻き消えた。

 追加される使い魔二体。さすがに四体が限界ではないか。
 基本的に四体で運用していたということは、限界数は倍の八体を見積もっておこう。

 形成されたのは、砲台となる鳥型。
 これで前衛となる剣、支援をする鳥、本体とも言えるイリヤを守る盾が揃った完璧な布陣。
 単純に攻守揃った敵を相手取るだけでも苦戦するというのに、それがツーセットずつ揃っている。

 しかも自律型。これらの陣を抜いても、イリヤ自身が何らか反撃してくる可能性もある。

 次弾術式装填。両腕の魔術刻印を弾倉代わりに、術崩しの式を弾丸として込める。

 装填した式弾の数は十二。鳥型は優先順位を下げ、剣と盾を処理したい。
 数ではかなりの差があるが、俺自身と使い魔個々の能力では当然俺の方が性能は上だ。

 致死の危険性があるのは剣の刺突のみ。
 鳥の光弾による衝撃は然程強力なものではない。十、二十と重ねて受ければ話は別だが、そんな状況にはなりえないだろう。
 剣による攻撃の方が殺傷に機能特化している分危険だが、アスファルトを根元まで貫く刺突はともかく、斬撃はそれほどの脅威ではない。

 
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