暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
月下の死闘(U) 〜舞い踊る剣舞〜
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 こちらが家一軒を飛ばして行く間に、あっちは数軒飛ばしで近づいてきているのだから。

 意を決したように振り返るフェンサーを、しかし俺は咄嗟に引き止めた。

「待て。多分、イリヤはバーサーカーをこっちに向かわせないと思う」
「はぁ? ……聞きたくないけれど、根拠は?」
「勘、いッづ!?」

 華麗なヘッドバットが決まった。
 目の前に星が散り、突然の衝撃と痛みで一瞬意識が眩んだほど。

 勘という言葉の"か"の時点で既に頭を後ろに引いていたあたり、どう答えようと頭突きをかましていたのではあるまいか?

「マスター? 冗談を言っている場合ではないのだけれど?」

 おっそろしい笑顔でニコニコと抗議してくるが、それでも行かせるわけにはいかない。

 確かに根拠は勘だとかそういう曖昧なものだが、何故か確たる自信があった。



 今夜はこれ以上、イリヤスフィールは手を出してこない。



 前提としてそれは俺たちが逃げていればの話で、今フェンサーがバーサーカーの相手をしに戻れば気が変わってしまうかもしれない。
 いや、間違いなくそうだ。少女の何の気まぐれであるにせよ、現状はそれに甘えさせてもらう方が俺たちにとっては得策であるのは疑いようもない。

「頼むよ。もしも追撃の気配があったらおまえの好きにしていいから」
「…………っ……もう、しょうがないわね!!」

 俺の意を汲んでくれたのか、マスターの命令だからか。
 何とか意見を受け入れてくれたフェンサーは、それから振り返ることは一切せずひたすらに逃走の道順を辿る。

 何度か聞こえたバーサーカーの咆哮は、イリヤと戦っていたあたりに来たところで止んでいた。

 やはりサーヴァントを連れて、追撃を仕掛けてくるようなことはなかったようだ。

 今夜を凌ぎ切ったことにはなるが、フェンサーの表情は非常に気に入らないといった様子だった。
 内心で色々と思うところはあるだろうが、今夜はこんな終わり方で手打ちということにしてもらいたい。





 今更になってひどい疲労感に襲われながらも、俺とフェンサーは二度目のバーサーカーとの対決を乗り越えたことを実感していた──────














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