暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
月下の死闘(U) 〜舞い踊る剣舞〜
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 ただでさえ規格外の使い魔生成、最悪の事態として再生、復元してくる状況も考えていた。
 新しく出された使い魔なら話は別だが、今イリヤの周囲に展開していたのは一度倒されたものを復活させたもの。

 術式を仕込めていない新品使い魔は、ほとんどが革ジャンで一網打尽である。

 残りの新品で造られた、元は盾型だった使い魔の鳥二体を光弾で撃ち落とす。

Blitz Shot(雷撃), Rifle Bullet Ignition(狙撃射砲)!!」

 雷を帯びた光弾の精密射撃で撃墜される。

 上手く出し抜いただけの結果だが、アインツベルンの魔術師相手と考えれば上々だ。

 これで逃げる準備は万端。後はアイツが合流すれば…………

「マスター!」
「っ、ナイスタイミング!」

 一軒家の屋根の上から飛び降りてくるフェンサーの姿が見えた。

 無事な相棒の姿に安堵しながら、すぐさま指示を出す。

「よし、もう恥ずかしいとか言ってられん。俺を運んで逃げてくれ!」

 頷きながら懐に潜り込む。
 肩から抱えるようにして体重を支え、フェンサーは何事もないかのように屋根の上へと跳び移る。
 自分の身体能力では体験できない跳躍と浮遊感に、若干バランスを崩しながらも何とか着地した。

 彼女が人間の俺みたいに道なり走って逃げるわけはない。
 このまま屋根伝いに一直線に、途切れたところは跳びながら行くつもりだろう。

「■■■■■■■■────ッッ!!」

 二度目の跳躍で屋根を渡ったその時、そう遠くはない距離からあの咆哮が聞こえた。

 夜の静けさを食い破るような叫び声は、間違うはずもないあの狂戦士の声だ。

「うわ、結構近くねえか!?」
「アレの自動蘇生は半端じゃないもの。半身が消し飛んでるぐらいの状態ならまだしも、私じゃ宝具無しでのバーサーカー殺しには限界がある」
「え、宝具無しで殺せたの!?」

 結構な確率で一度の宝具解放はやむなしと判断していたが、まさか未使用であの狂戦士を倒したのか。

 それは凄まじい大金星ではないのか。

 俺がイリヤ相手に時間稼ぎをしているだけの状況で、彼女は命懸けでありながら宝具も使わず、バーサーカーを打倒したと言うのだ。
 他のどのサーヴァントであっても容易なことではない。ともすれば宝具を以てしても、絶命させるに至らない可能性すらあるサーヴァントだ。

 彼女のマスターとして、少しだけ情けないと思ってしまう。

「チッ、マズイわね……追いつかれるかもしれない」

 こちらが屋根伝いに移動しているのに対して、バーサーカーは家の一、二軒は軽々と跳躍で飛び越しながら向かっている。

 大人と子供の競走のように、まるで歩幅が違う。

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