暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
魔術師たちの安寧
月下の死闘(U) 〜舞い踊る剣舞〜
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がほとんどなので、後から用途を変えるのは本来なら愚策と言って差し支えない。
それが一介の魔術師程度の話であれば。
さすがに質量に大きな差がある変化は無理だろうが、同程度の体積であればあらゆる形状に変えられるのだろう。
「ホント野蛮なんだから。魔術師がすぐに接近戦を仕掛けるなんて悪い癖よ?」
「……思い返せばごもっともな意見だ」
相手が何者かに関わらず、聖杯戦争が始まってから肉弾戦闘ばかりしている気がする。
かといって有用な遠隔魔術や礼装など用意していないし、何もないのであれば自分の肉体を武器にするのが信用度は一番高い。
黒守の魔術であればサーヴァントにも起死回生を見出せるが、聖遺物クラスの魔術礼装が必要なため現実的ではない。
学園での戦いのようにフェンサーから宝具を借りるくらいでしか、神話魔術の真価を発揮することも出来ないだろう。
「今後は魔術礼装を持ち歩く習慣をつけようか……」
「ええ。貴方に今後があれば、のお話かしらね」
本来サーヴァントが戦闘を行い、マスターが後方支援に徹するというのは一番ベターな戦術だ。
少し形は異なっているが、現在の状況はまさにそれに即していると言える。
ただしそれは互いの戦力が拮抗している場合に限る。
戦力差により最終目的を撤退に設定しなければならないこちらは、圧倒的に不利な状況下に置かれていた。
「いいわ、少し遊んであげる」
使い魔の更なる形状変化。
鳥型だったモノが長剣に変化し、イリヤの前に剣と盾が浮かんでいる。
数を増やす様子はない。遊ぶと言った言葉に偽りはないらしい。
強者ゆえの余裕、もしくは格上としての自信の表れとでも言おうか。
なお俺はそういう嘗められるのが大嫌いなのでむしろ奮起します。
「──────」
本気の全力で獲りに行く。
使い魔の強度は高くない。今までに簡素な魔術弾で撃墜出来ているのが証明だ。
イリヤの周囲を浮遊する盾も防御に機能特化したとはいえ、その強度が劇的に変わることはない。
剣ならどう動かしても直線、軌道は読みやすい。長剣を躱しつつ、機を見てあの盾を破壊する。
盾を逸らして攻撃をねじ込むには武器も手数も足りない。決めるのなら全霊の一撃での短期決戦だ。
「っ!!」
剣先が下がるのを見逃さない。上段への斬り上げを後方跳躍で躱す。
続く袈裟斬りと下段薙ぎを、横への移動から極端な前傾姿勢を取ることで凌ぐ。
真上で長剣の剣先が下を向く。
そのまま地面に縫い付けるかのごとく落下するそれを、何も考えず前に走ることで抜ける。
鉄とは違う甲高い音を立てながら、容易くアスファルトを貫く剣を後ろ目に、再び無防備な少女へと肉薄する。
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