8部分:第八章
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は絶対だから」
とにかく絶対者なのは事実なのだった。
「だから。寝ましょう」
「それしかないですか」
「ええ、はっきり言ってね」
こう夕菜に対して答えるのだった。
「ここで降板させられたくないでしょう?」
「それはやっぱり」
降板は夕菜にとっても避けたいことだった。仕事がないことがどれだけ悲しいことか、芸能界のこうした怖さは彼女も若いながらにわかっているのだ。
「じゃあ」
「はい、素直なのも大事よ」16
マネージャーは今度はこう夕菜に告げた。
「だからね。寝ましょう」
「わかりました。それじゃあ」
夕菜はマネージャーの言葉に従い寝袋の中に入った。マネージャーはその彼女を守るようにして側に寝て毛布を被った。そうして眠りに入ったのだった。眠りに入った夕菜は奇妙な夢を見た。
そこは一面の荒野だった。見渡す限り岩と荒れた土があるだけの荒野だった。赤い、見るからに痩せた土と岩が広がり他には何もない、そうした場所だった。
彼女はそこに一人で立っている。服は青い、忍者の装束だった。男もののズボンのそれに頭巾だけを被っていない。背中に忍者刀を背負ったその姿で一人立っているのだった。
「忍者!?」
荒野の次に気付いたのは自分の格好だった。
「どうしてこんな格好!?」
「姫、ここでしたか」
「探しましたぞ」
自分が何故この服装なのかわかりかねているとここで後ろから声がかかってきた。すると黒い忍者装束のあのベテラン俳優と赤い装束の女優が彼女の前に降り立ったのであった。二人は夕菜の前に片膝をついて控えていた。
「勇敢なのも宜しいですが」
「無鉄砲はなりません」
二人はそれぞれ夕菜に言ってきた。
「それだけは宜しいですね」
「是非」
「いえ、それは違います」
(あれっ!?)
夕菜は今度は自分が今発した言葉に驚いたのだった。
(どうしてこんな言葉が?)
自分でもわからなかった。しかし言葉はさらに自然に出るのだった。
「虎穴に入らずば虎子を得ずです」
また言葉が自然に出た。
「ですから私は」
「ですがそれでもです」
「敵の田沼幻斎はあやかしの術を使います」
「術なら私も負けてはいません」
また言葉が自然に出た。
「田沼を恐れてどうして。秘宝を取り戻すことができましょうか」
「ではやはりここは」
「今より」
「金はいますか」
「こちらに」
今度は若手の俳優が彼女の前に姿を現わした。彼は白い装束だ。忍者装束としては少なくともこうした赤い荒野では目立つ服だがそれでも何故か映えていた。
「おります」
「敵地の中のことはわかりましたか?」
「無論」
その俳優も完全に忍者になっていた。顔つきや仕草だけではない。雰囲気までもが完全に忍者のそれになってしまっているのだった。
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