6部分:第六章
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第六章
「それはね。夕菜ちゃんじゃないから」
「だからですか」
「夕菜ちゃんが羊が好きでよかったわ」
マネージャーはこのことも感謝していた。
「まあとにかく今は」
「体力をつけてですね」
「そういうこと」
今の話の核心であった。
「それじゃあ。いいわね」
「はい、わかりました」
こうして夕菜はまずは体力をつけることになった。そのうえで撮影に入るがこの撮影は。どういうわけかまず他の俳優やスタッフ達と一緒に監督の家に集められるのだった。
「ここで?」
「撮影?」
夕菜だけでなく他の出演者やスタッフも首を捻る。夕菜の横にいるマネージャーもだ。
「ここで撮影なんて有り得ないわ」
「そうですよね」
夕菜も彼女の言葉に頷く。
「ここじゃ」
「けれどね。夕菜ちゃん」
スタッフの一人がここで夕菜に言ってきた。
「撮影はここだよ」
「本当ですか!?」
「スケジュールじゃそう書いてるよ」
そのスタッフはこう夕菜に話す。
「しかもね。今日だけじゃなくて」
「今日だけじゃなくて」
「ずっとだよ」
こうも彼女に話す。
「ずっとね。この一月の間ね」
「ここで撮影ですか」
「監督の案じゃそうなんだよ」
「密室ものかしら」
「推理ものだったのか?」
他の俳優達はスタッフの言葉に眉を顰めだした。そうしてそのうえで口々に言い合うのだった。誰もが不安を感じはじめていた。
「この映画って」
「初耳よ」
「大体どんな映画なんだ?」
「さあ」
実は誰もどんな映画かさえ知らないのだった。
「とりあえず出てくれってオファーがあったけれど」
「私も」
「僕。オーディション受けて」
新人と思われる男の子もいた。
「それで合格したんですけれど」
「どんな役かは聞いたかい?」
「いいえ」
ベテラン俳優の問いに首を横に振る。
「全然。監督からは宜しくと言われただけで」
「それって私と同じです」
夕菜はその男の子の言葉を聞いて自分のことを述べた。
「私も。そう言われて」
「主役になったの?」
「なった後の発表会でです」
ここでも夕菜は素直さを維持していた。この辺りは彼女の美徳と言ってもいい。
「けれど。その時」
「やっぱりそうか」
ベテラン俳優は男の子の言葉を聞いた後で夕菜の話も聞いて頷いた。まるでそれで彼の考えが合っていたのだと確信するように。
「噂は本当だったんだな」
「噂!?」
「何ですか?それって」
「話にはなっている」
彼は深刻な素振り、ここでは演技を入れずに語った。
「佐藤監督が何も語らないのはな」
「それですか」
「脚本も何もかも自分でやる」
「はい」
これはあまりにも有名なのでここで言うまでもないことだったがそれでもこの俳優はあ
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