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10部分:第十章
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「そう、そして私も」
 二人は何時しか見詰め合っていた。それはまるで男女のようであった。その見詰め合う姿が夕陽に照らされて紅くなっているのである。
「そうなのかもね」
「じゃあ私は今は」
「決して結ばれるものでないにしろ」
 朝香はまた言った。
「私達は今は」
「それじゃあ先生」
 夕菜はその朝香の言葉に応えて言うのだった。
「今度は」
「今度は?」
「はい、一緒に」
 こう言うのだった。
「一緒になりたいです」
「私となのね」
「今は女同士でも」
 朝香は言う。
「きっと。次では」
「次では」
「一緒になれるわ」
 じっと夕菜の目を見ながらの言葉であった。自分を見詰めているその目を。
「きっとね」
「じゃあ先生」
 夕菜はその朝香の言葉を受けて言うのだった。
「今はこれでお別れでも」
「また。会いましょう」
 濡れた、涙を感じさせる声であった。
「きっと。生まれ変わってね」
「はい」
 これがこの時の二人の終わりだった。また時代は変わった。今度は終戦直後だった。廃虚の中にバラックが点在し昨日できたようなみすぼらしい、木やブリキの破片を集めて作った店が立ち並ぶ闇市を今一人の若い男が歩いていた。見れば手に重いものを持っていて陸軍の軍服を着ている。見ればその陸軍の軍服は将校のものだ。だがその立派な格好も今では何の意味もないものだった。
 誰も彼を見ない。己のことで必死なのか周りを行き来する者は誰も彼を見ずに行きそして商いをして何かを買っている。ある店では残飯を集めたシチューやすいとんを出していてある店では何処からか持って来たのか服を売っている。素性は怪しい店ばかりだが活気があるのは間違いなかった。
 彼はその中を歩いていく。その顔は女のものだった。よく見ると朝香である。彼女は今度は軍人になりこの闇市の中を歩いているのだった。
「ねえ兵隊さん」
 その彼にはじめて声をかける者が出た。
「遊んでいかない?」
「遊ぶ?」
「安くしとくよ」
 あの女優だった。けばけばしい化粧に赤い派手なだけの服を着ている。その外見から彼女が何であるかはすぐにわかった。もう言うまでもなかった。
「だからさ。どうだい?」
「いや、いい」
 朝香は女優の言葉に対して静かに首を横に振った。
「今はな」
「あら、つれないわね」
「人を探している」
 今度は彼女から言ってきた。
「人をな」
「人って誰なのさ」
「女の子だ」
 こう女優に返した。
「まだ。女学校のな」
「女学校!?」
「この近くにあったが」
「ああ、あそこね」
 娼婦になっている女優はこの言葉を聞いてすぐに察したようであった。
「あそこに通っていた女の子ね」
「知っているのか?」
「その学校ならもうないわよ」
 娼婦
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