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第四十四話 二次移行
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『ちっ、面倒な』
先ほどまで相対していた相手……箒の機体が突如として光を放ち始めたことにエムは舌打ちする。
この状況でISに起こる変化といえば、考えられるものは数えるほどしかない。なんらかの機能が解放されたのか、あるいは二次移行を果たしたのか。可能性は限りなく低いが単一仕様能力に目覚めたということもあり得る。本来は二次形態から発現する可能性のあるものだが、織斑一夏という前例と機体を作ったのが篠ノ之束である以上はそれも不思議ではない。
だが、いずれにしても目の前の敵の戦力が跳ね上がるのは間違いないことはエムも確信している。その上でただ面倒なだけだと言い切ったのだ。
傲慢ともとれるがそれは自身の能力に対する絶対の自信であり、先ほどまで福音との戦いを見ていた中で箒の実力自体は現時点で驚異に値しないと判断したからだ。ましてや、相手はすでにエネルギーが枯渇している。
もっとも、エムが篠ノ之束という存在についてもう少し理解が及んでいれば多少なりとも警戒したのかもしれないが……。
そしてその余裕は思いもしないところから崩されることとなる。
新たな光が柱となって海中から現れたのだ。
『一夏? 一夏ぁ!』
海中から上がった光は二本。確信はなかったがそのどちらかに一夏がいると信じ、そのもとに向かおうとする箒。しかしそれを黙って見過ごすエムではなく、手元の射撃武器『星を砕く者』による妨害を行う。もちろん下手に直撃させて、束の妹ということで利用価値のある箒を殺すつもりはなかったので、明らかに手加減したものである。それでもエネルギーの尽きた箒を行動不能にするには十分な一撃であった。
そう、本来であれば。
しかし確かに仕留められるはずのその一撃を受けてなお、箒は止まらずにそのまま光へと辿り着き海へと潜る。
あり得ない出来事にエムは一瞬の動揺を見せるもすぐに持ち直し、追撃に向かう。
しかし、さらにあり得ないことは続く。
(あれは……西園寺さん?)
箒が潜った先にいたのは、彼女との思いとは裏腹に紫苑であった。不思議なことに海底へと沈み切らずに停滞し、光の柱を発している。
一夏ばかりを気にかけていた箒にとっては当てが外れたという思いはあったものの、箒はその姿を見た瞬間に今までの自分の考えや思いがすべて吹き飛んだのを感じた。
身を挺して守ってくれた。自分は決して、そのように守ってもらえるような態度をとった覚えはないにも関わらず。今回だけではない、思い起こせば『西園寺紫音』という存在は遠まわしに自分のことを気にかけてくれていた。その場では気付かなかった……いや、そう思いたくなかったその事実を今、ようやく箒は理解し
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