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歪みすぎた聖杯戦争
7話 普通と異常もまた紙一重
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の本の記述の信憑性などは最初からどうでもいい事柄だった。実家の土蔵から出てきたオカルトの古書というだけで、すでに充分COOLでFUNKYである。
殺人鬼が新たなるインスピレーションを得るには充分な刺激だったのだ。
さっそく龍之介は手記いあった。''霊脈の地''とされる場所に拠点を移し、夜の渉猟を再開した。
現代では冬木市と呼ばれるその土地に一体どういう意味があるのかは知らなかったが、龍之介は新たな殺人について吉良に雰囲気作りに重点を置くという方針で、極力、和綴じの古書の記述を忠実に再現しようと努めた。
まず最初に、夜遊び中の家出娘を深夜の廃工場で生贄にしてみたところ、これが予想以上に刺激的で面白い。まだ未経験だった儀式殺人というスタイルは、完全に龍之介を虜にした。病みつきになった彼は第二、第三の犯行を矢継ぎ早に繰り返し、吉良も次の四度目の犯行で殺ってみることになった。
そうして平和な地方都市を恐怖のどん底に叩き落とした。
そして四度目の犯行で夢にも思わなかった事が起きてしまった。魔法陣から現れた道化師の姿をしたそいつは吉良のことをマスターと言い、何も知らない俺たちに聖杯戦争を説明してくれた。そして、お近づきに用意した子供をどうぞと渡すと、魔術の証拠を見せようと悪知恵の笑みを浮かべて子供に近づく、そして道化師は何か呟くと子どものロープと猿轡を優しく解く。

『いいかい坊や? 今から僕ちんから逃げだせたら見逃してあげるよ〜』

子供は道化師に怯えている様子で言葉を聞いてるか怪しい状態だったが、そののまま立ち上がり、両親と姉の死体には目もくれず、血まみれのリビングを横断する。扉の外の廊下には、二階へ上がる階段と玄関。そこまで行けば彼は殺人鬼の手から逃れ、生き延びることが叶うだろう。

『おい、キャスター..』

何をするかもわからないキャスターに少し焦れったい吉良は声をかけたが、キャスターは素早く手で遮って制止した。勢いに呑まれた吉良は気を揉みながらも為す術もなく、
逃げていく子供の背中を見送るしかない。少年がドアを開け、廊下に出る。目の前には玄関の扉。
さっきまで恐怖の色だけに塗り込められた瞳が、そのとき、ようやく安堵と希望で輝きを取り戻す。
次の刹那に、クライマックスは待ち受けていた。陽の光を浴びた手先から灰色に変化していく。
その状況に絶叫する暇もなくみるみる人しての形を失っていく。そして泥人形の様に崩れていく。
最後には魂消る絶叫。
残ったのは服と灰の残り滓だけが、子供がそこにさっきまで居たと実感させていた。
これが、キャスターと彼等の邂逅の瞬間だった。



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