暁 〜小説投稿サイト〜
歪みすぎた聖杯戦争
5話 坐して待つ
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
河口も間近な未遠川の川幅を跨ぐ冬木橋である。
その遥か上空にライダーとそのマスターウェイバー・ベルベットがランサーとセイバーの闘いを監視していた。いや、監視しているのはライダーだけである、実際この距離からでは、ライダーの視力スキルによる千里眼でなければ、ウェイバーでは点にしか見えないのでここはライダーに任せるしかないのだが──

「ラ、イ、ダー、……早く……降りよう、も、もう少し..高度を下げて…….、ここ……早く!」

そんなC2の上に、命綱も何もなく両手両足だけで餅を掴む柔らかい感触を感じながらしがみつく姿は情けないことこの上ないのだが、このさい致し方なく、普段から心掛けている威厳や余裕を示すことは綺麗さっぱり諦めていた。
すぐ隣には、彼のサーヴァントのライダーが胡座をかいて座っている。
寒さと恐怖に、ひっきりなしに歯を鳴らしながら訴えかけるウェイバーの声も、向こうの闘いに監視しているライダーはどこ吹く風である。

「何言ってんだよ旦那、ここまで高域な場所なら監視するには丁度いいんだぞ?それに周りの景色を見てみろよ、絶景じゃねえか。」

ライダーはウェイバーの滑稽な姿を鼻で軽く笑いながら、夜の街並みをライダーは眺める。ここの世界の景色は夜だというのに街の光だけでここまで綺麗に見えるとは、とライダーは感心していた。

敵との接触を求めて市街を徘徊していたライダーたちが、サーヴァントの気配に気付いたのは午後も大分遅くなってからのとこだった。ところがさっそく襲いかかるのかと思いきや、ライダーは遠巻きに相手を監視するばかりで、一向に仕掛けようとしない。疑問に思ったウェイバーが問い質すと、ライダーは鼻を鳴らしてこう答えた。

『周りを誘ってやがるからな、他の奴等も気付いている事だし、奴の誘いに集まるだけ集まったらそこで纏めて爆破するのが手だな、うん。』

『──ということは?』

『今は待つってことだよ、うん。』

たしかにライダーの言う通り、誘いに乗ってむざむざ挑みかかるのは愚の骨頂である。
そんな手に乗る愚か者たちは、放っておいても互いに喰らいあって数を減じていくだろう。
あの挑発しているサーヴァントがどれほどの自信家かは知らないが、ライダー以外のサーヴァントが喧嘩を買ってくれるのなら、それはそれで好都合だ。
さて、そうと決まれば後は根比べである。市内をあてどなく彷徨するサーヴァントの気配を、ウェイバーとライダーは一定の距離を置いたまま追跡をし続け、今もこうして見張っている。

とはいえ──視野の広い高域に陣取る理屈は、むろん解らなくもないが、それにしても限度というものがあるだろう。サーヴァントならいざ知らず、生身の人間にすぎないウェイバーはここから落ちれば確実に死ぬ。その程度の理屈が解らないはずもあるまいに
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ