第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
1.August・Night:『Memory...Denied』
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そんな嚆矢を嘲笑うように────フードの奥の瞳を爛々と、黒豹のように煌めかせる少女は。
「それとも────私にゃあ、掛ける言葉の一つもねェってェのかァ!」
「ッ………………………………」
悲鳴のようにも聞こえる言葉を、溢しながら。遂に膝を突いた嚆矢に向けて、まるで突き放すように『右手』を伸ばす。
その先端から、豹の爪を思わせる掌から────槍を放つ。
「────────!」
その槍を、長谷部で受ける。食屍鬼の爪牙の比ではない圧力、それを────刀の鎬を使う、合気により受け流す。二撃目、三撃目と。
そもそも、古流武術の基本は合戦でのものだ。武器の使用を前提とした総合格闘技、それが古流武術である。
そして、何よりも────槍だと言うのならば、あの“迷宮蜘蛛”の槍騎士の“宝蔵院流”とは比べるべくもない稚拙。
ただ、強力な能力に任せた一辺倒の突き。見えずとも、躱すくらいは造作もない。
この程度の技量であれば、何時までも躱していられよう。彼女の技量が本当にこの程度で、かつ万全の状態であれば……の話だが。
「やるじゃねェか、“黒い扇の膨れ女”が言ってただけはある……“屍毒の神”とやらの猛毒を越えただけはあるって訳かァ」
『ハ、なればどうした…………所詮は洞穴に引き篭もる蛞蝓よ、この我とは比べるまでもないわ!』
しかし、それすらも薄ら笑いだけ。少女は金色に染めた揉み上げを右手で梳くと、一瞬だけ攻め手を弱める。何故か、その瞳に懐古を宿して。何故か、その左手に────魔書を携えて。
『何を息吐いている、今が好機だろうが! 殺せ、今すぐ! 此奴は貴様の事を覚えていなかった……即ち、獲物だろうが!』
「うるせェ……解ってンだよ、クソムシが!」
瞬間、美眉を潜めて。蠢き這いずるような鉄の装丁の魔導書に生命力を削られ、魔力に変換されて。無論それは魔導書の炉によるものだ、少女に反動は無い。
少女の右手に集まる、魔術の気配。それは酷く覚えがある。収斂する気配、正にそれは────
「なァ────液体窒素って、知ってるかァ?」
『“沈静”、“鎮静”、“鎮勢”!』
「ッ────────!?」
覚えがある、術式で。嘲る少女の掌に集まる青白い霧、それの正体に気付いて────
「────くたばりなァ、クソ雑魚ォ!」
放たれた、『消沈の三大ルーン』により−196℃まで冷やされた窒素の槍。その一撃を矢張、長谷部で受ける。しかし、刃を通して冷気が伝播するのは止められない。
指先が凍
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