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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
1.August・Night:『Memory...Denied』
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悪心影(あくしんかげ)”に、燃え盛る三つの瞳で嘲笑われる迄もなく。
 あれは吐息の形をとった、肺からの汚染だ。呼吸をすればする程、汚染されていく。ならば、既に入ってしまった酒精を取り除く為にはどうするか。()()()()()()()()


(────喰え、ショゴス。喰って、()()()()()()()()()


 ならば、それしかない。これ以上の汚染を受ければ、それこそ手遅れだ。
 かつて『スクール』のゴーグル男に掌を潰された際は、ショゴスが組織に刷り替わるまで二分ほどを要した。ならば、問題はない。ほんの五分ほど、()()()()()()()()()()()()()()()()()の事だ。


『────てけり・り。てけり・り!』
「クッ────────────?!」


 指示に、喜び勇むかのようにショゴスが啼く。間髪容れず、両の肺腑が一口に貪られる。喉を駆け昇ってきた塊を吐き出せば、路面に鮮やかな緋色の徒花(あだばな)が咲く。
 目の回る中毒の最中、目の眩む激痛に口角を吊り上げる。喰われた肺では言葉すら発せず、路面に向けた悪鬼の笑顔は誰にも見えてはいないだろうが。堪らない、そうだ────


(これが────殺し合いだったな)


 刹那、身を躱す。翳されていた少女の掌からの目に見えない『何か』に、徒花が路面ごと散らされる。ショゴスの自律防御(オートディフェンス)は、肺腑の修復に全力を懸けさせている為に無い。
 矢張(やはり)、運が良い。もしも『片肺ずつ』などと悠長な事をやっていたら────今頃、この頭が西瓜のように砕かれていた事だろう。


「ひっはははは────よく躱したじゃねェかァ。“悪酔葡萄酒(バッドトリップワイン)”に冒されてる状態でェ、私の『窒素爆槍(ボンバーランス)』をよォ!」
『フハハハハッ────さぁ殺せ、宿主! 今なら奴は、まな板の上の鯉と言う奴だ!』


 白いコートを、夜風と爆風に翻らせながら。鉄の装丁の魔書を携えた黒髪の少女は二撃目、三撃目と『右手』を繰り出す。
 成る程、爆槍とは良く言ったものか。その度に、目に見えない何かによりその先のモノが撃ち砕かれる。


「────────」
「どォした、あの食屍鬼(グール)どもを相手してた時の勢いはよォ! それとも……」


 そもそも言葉など発せないし、口を開けば血を溢すだけだ。視界には端からテレビの砂嵐のような狭まり、体は末端から痺れるように重くなってくる。典型的な酸欠の症状だ。
 
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