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竜のもうひとつの瞳
第十六話
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 唐突に言われたその言葉に、俺は即答で返すことが出来なかった。

 いよいよ天下に向けて動き出されるのか。そう思えば嬉しかった。
天下統一は政宗様の夢、この方の才ならば決して引けは取らないだろう。

 「いよいよですね……それで、差し当たって何処を攻めるおつもりですか。最上ですか? 佐竹ですか?」

 「いや、甲斐の武田信玄と越後の上杉謙信を討つ」

 「は?」

 奥州に敵対する周辺諸国を崩す前にどうしてそこなのか。俺には理解が出来なかった。
どうせならばもう少し現状を何とかしてから行くべきだろう。
奥州から甲斐や越後は一応隣国であるから決して遠い国というわけではないが、初戦の相手とするには些か分が悪い。
相手はどちらも名うての戦上手、それに越後や甲斐以外でも佐竹や最上の動きも気になるところ。
意気揚々と攻め込んだ途端、留守を狙って攻め込まれでもしたら笑い話にもならない。

 「政宗様、奥州を狙う輩をまず落としてから徐々に勢力を拡大させるべきかと思いますが」

 今のところどちらの国も奥州を奪おうという動きはない。
ならば、まずは奥州に敵対しようとしている国を落としてから考えるべきだと思うのは扱く真っ当なことではないかと思うが……
その辺り、どう考えておられるのか。

 「そんなことは俺も分かってんだよ。だがな、そんな悠長な事を言ってたら
天下統一を成し遂げる前に爺さんになっちまう。
まずは強いところから叩き潰す……甲斐の虎と軍神と言やぁ名の知れた武将、それを討ったとなりゃ、
迂闊に手出しは出来なくなんだろうよ」

 力を示して従属を迫るのか。まぁ、かつてそのようにして奥州平定を急いだこともあったし、
今回も同様にしてそのように事を起こして力を示そうという理屈は分かるが……果たして上手くいくだろうか。
前回と今回では力量差もあるし、軍神と甲斐の虎を同時に相手するにはこちらの経験不足は否めない。

 「近々甲斐の虎と軍神がぶつかるらしい。そこを狙って一気に叩く」

 「漁夫の利を得る御積りですか?」

 「そんなみみっちい事はしねぇよ。纏めて掻っ捌いた方が手っ取り早くて良いだろう?」

 手っ取り早いって……それを実現出来るように策を練るのは一体誰の仕事だと思っているんだろうか。
政宗様一人が突っ込んでどうにかなる話じゃねぇのは、いい加減分かってると思いたいんだが……。

 こんなことなら無理して出てこないで、もうちっと休めば良かった。

 思わず頭が痛くなってこめかみを押さえていたところで、政宗様が心配そうにこちらを見ているのに気付いた。

 「おいおい、大丈夫か? 病み上がりなんだから無理はすんな」

 「……政宗様。そう思うのであれば、もう少しマシな提
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