第十六話
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顔をした。
「俺だって悪いと思ったことは素直に謝る……今回の事は、俺が全て悪い。
自分のモノにならねぇからって力ずくで奪おうだなんて、男として最低だ……よく止めてくれた」
良かった、どうやら冷静に戻ってくれたようだ。
二月もの間探しに行くと大騒ぎされていて、一体どうなってしまうのだろうかと思っていたが、これならばもう大丈夫だろう。
一体何処に向かったのか分からない姉上を探して、迎えに行くことが出来る。
「独眼竜の名に誓ってもう二度とそんな馬鹿なことはやらねぇ」
「ついでに奥州筆頭の名にも誓って下さい」
「無論だ」
「誓いを破ったら……此度の件、詳細を大姉上に報告させていただきますので」
その一言に政宗様が凍りついたのは言うまでも無い。
実は今回の件、出奔の具体的な中身については大姉上には知らせていない。
無論それは政宗様の体面を重んじてのことだが、それ以前に手篭めにしようとしました、
などという話が大姉上の耳にでも入ればおそらく政宗様の命が無い。
多分俺の命もないとは思うが……まぁ、姉上を苦しめた罰だ。甘んじて受けるつもりではあるのだが。
「ぜ、絶対に破らねぇ! 破らねぇから喜多だけは勘弁してくれ!」
城の男達の恐怖を体現したような大姉上を引き合いに出したのは正解だったかもしれない。
政宗様の引き攣った顔を見ていれば、もう二度と馬鹿な真似はしないだろう。
「……おい、小十郎。お前は俺が景継を側室に据えることには反対か?」
安堵している俺に、おずおずと聞いて来た政宗様は若干情けなくもあったが、
大姉上という強固な盾があればこの反応も頷ける。俺も多分、同様の反応を見せると思う。
なので、俺はその盾を存分に利用して素直に答えて差し上げた。
「好いた女子を手篭めにしようと考えるような男に、喜んで差し出す馬鹿はおりませぬ……
と、言いたいところですが、姉上がそれで良いと言うのであれば、小十郎が反対する謂れはございませぬ」
一度は黙って見逃そうとした身、反対などと言えるはずも無い事は分かっていたが、すんなり認めてしまうのも悔しい。
姉上がそれで良いのなら、というのは紛れもなく本音だから間違ったことは言っていないが。
「お前、根に持ってるだろう」
「いいえ、小十郎が根に持つなどとある筈がございません。政宗様を恨むなどと」
俺がそんな感情を政宗様に抱くなどと、あるわけがねぇ。本当にそうか、と言われれば……
まぁ、根に持ってるのは少しはある。
「…………。……まぁ、いい。それよりもな、小十郎。お前が引っくり返ってる間に
いろいろと考えたんだが、そろそろ奥州を出て天下統一へ向けて動き出してもいいかと思ってんだ」
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