第七十五話
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「リズっ……!」
日本刀《銀ノ月》と彼女のメイスがぶつかり合い、ガリガリと金属音を鳴らしていく。今にも泣き出しそうな彼女は何も言わず、ただただ俺を潰さんとそのメイスを押し込んでくる。本職が戦闘ではないとはいえ、筋力値は彼女の方が上であり、いつしか圧されていく。
「やあキリトくん、ショウキくん。こんなところまで、わざわざご足労していただいてすまないね」
彼女とともに部屋に入ってきた、シルフ族に似た格好の青年はそう言いながら、指をパチンと格好付けて鳴らす。すると、美しい夕焼け空を見せていた世界樹上空は消え去り、どこを見ようと黒い闇に覆われた世界へと変容していく。
「オベイロン……いえ、須郷!」
「まったくしょうがないなティターニア……ここでは、妖精王オベイロン様、と呼んでくれないと」
やはり目の前の青年は、あの時アスナの病室で会った須郷伸之という青年――だとアスナの声で確信し、彼女のメイスを弾いて一旦距離を取る。足場すらも暗闇で感覚はないが、見えないだけでしっかり足場はあるらしい。彼女は即座に態勢を立て直すと、距離を取った俺に追撃をせんと向かおうとするが、それを須郷が彼女の頭を掴んで押し止める。
「……その手を離せ!」
「良いのかい? 手を離した瞬間、彼女は君を襲うんだよ?」
反射的に出て来た俺のセリフに、須郷がニヤニヤとした表情で俺に向かって問いかける。確かに彼女が須郷の捕縛に抵抗しようとしているが、それは須郷の捕縛が苦しいからではなく、あくまで俺に対して攻撃をするため、と感じられた。
「ショウキくん! リズは今、須郷に操られてるの!」
「操られてる?」
彼女に一体何が、と考えている最中、鳥籠に閉じ込められたままのアスナから、信じがたいことが語られる。それを聞いた須郷の哄笑が闇の中に響いていく。
「その通りさ。僕のナーヴギアを通して人間の洗脳を行う、っていう実験体の第一号だ。光栄に思ってくれたまえよ?」
ナーヴギアを通して人間の洗脳。そんな信じられないことを言われた俺たちの動きが、しばしの間止まってしまう。須郷はそんな俺たちの反応も愉快というように、さらに演説を続けていく。
「詳しいことは、君たちのようなガキに言っても分からないだろうから、割愛するがね。要するに、彼女は『ショウキくんとキリトくんを見たら反射的に攻撃する』ようになっている、とでも言えば話は早いかな?」
「ショウキ!」
須郷が偉そうに語る中、キリトがその二刀を構えて須郷へと突撃する。ユイはアスナの元へ置いていき、彼女は鳥籠のロックを解除せんと行動していた。
「おーっと。先にショウキくんと遊ぶ番だ、君たちは待っていてくれたまえ」
キリトの突撃を横目にした須郷が、リズを掴んでいる手とは別の手を
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