第七十五話
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が風とともに世界に響いた。急いで周りを見渡すものの、ヒースクリフの姿どころか、茅場晶彦としての姿も見当たらない。
『感動の場面に長々と水を差す気はないのでね。簡潔に、二人へ贈り物をさせてもらうよ』
お詫びの印としては安いかな――などと、真面目なのかふざけているのか分からない口調で、何やらデータのような物が落下してきた。キリトの方には銀色に光り輝く、小さな卵型の結晶が。
『この世界から出たら見てくれたまえ。どうするかはそれぞれ、君たちの自由だ』
そこで茅場の声は一旦途切れていた。短いながらも重たい沈黙が世界を支配した後、素っ気ない言葉が頭上から聞こえてきた。
『そろそろ私は行くよ。また会おう』
その言葉を最後に茅場の気配は消えていき、頭上に浮かんでいたシステムID《ヒースクリフ》の文字が消え去った。今のが何だったのか、ということを考えるより早く、ガチャっというこの場には似つかわしくない金属音が響いた。
「――アスナ!」
ユイがアスナが囚われていた鳥籠のロックを解除し、アスナはゆっくりと外の足場へと降りていく。感極まってそこへ走っていくキリトを、俺とリズはただボーッと眺めていた。
「行かなくていいのか?」
「……行けるわけないでしょ」
冗談めかして問いかけた質問に対するリズの返答に、「それはそうだ」と肩をすくめると、再会を喜び合う家族を見た後にシステムメニューを呼び出した。リズも同様のことをしており、三人を置いて俺たちはアルヴヘイムからのログアウトを果たした。
「……ふぅ」
世界樹で起こったことを菊岡さんに簡単に伝えた後、俺は再びアミュスフィアを操作していた。もちろん、もう一度ログインしようとしている訳ではなく、茅場からの『贈り物』を確かめる為にだ。
そこにあったのは、1つの小さなデータフォルダだった。タイトルは『Answer』――中に入っていたデータは、僅か一行にも満たない一文のみだった。
『結末まで全て支配できる程つまらないゲームはない』
その言葉は、アインクラッドでキリトがヒースクリフの正体を見破るきっかけにもなった、『他人のやっているRPGを端から眺めるほど詰まらないものはない』という、茅場の言葉に似ていた。そして、データのタイトルの『Answer』。これは俺がかつて彼に行った、『どうして?』という質問に対する答えということだろう。
どうして茅場はゲームマスターとしてではなく、クエストなどを全てシステムに任せた上で、プレイヤーとして参加することを選んだのか。どうしてフェアネスを重んじるシステムのSAOで、ユニークスキルというものがあったのか。……どうして、『俺』というソードスキルが使えない異分子が紛れ込んだのか。
その答
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