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SAO−銀ノ月−
第七十五話
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―が、再び攻撃を与えるより早く、彼女の動きがピタリと止まる。いつだか茅場……いや、ヒースクリフが行った、プレイヤーに対する強制麻痺。皮肉にもその強制麻痺に助けられ、意識が曖昧になりながらも壁によりかかる形で倒れ込んだ。

「ハハハ、やりすぎだよ君ぃ。英雄くんが死んじゃうじゃあないか」

 それが出来るのは、アインクラッドにおけるヒースクリフと同じように、このアルヴヘイムという世界の神である須郷だけ。ニヤニヤと笑いながら須郷は俺の元へ行くと、近くにいた彼女を適当に引き離すと、ボロボロになった俺の頭をアイアンクローのように掴む。

 シルフのアバターである俺も身長は高い方だったが、それ以上に改造されているようなオベイロンに掴まれ、俺の身体はゆっくりと浮かび上がる。

「これ以上痛みつけちゃったら、彼を実験に使えないじゃないか。男性用のデータもねぇ」

 左手でシステムメニューを呼び出すと、須郷は何やら操作していく。こちらからは何をしているか分からないが、十中八九俺を彼女のように操ることだろう。……いや、彼女のようになれればまだ上等だろうか。

 ――……ねぇ翔希。あたし、アスナをあんな目に合わせてる奴がいたら、絶対にそいつのこと許せない。それこそぶん殴ってやらないと気が済まない!

 朦朧とした意識の中でリズが言った言葉が思いだされる。アスナの病室から帰った後に、彼女から語られた約束。自分の代わりにその者を殴って欲しい、という約束だ。

「なに? この反応は……」

  ……そして、その『そいつ』は目の前におり、ぶつぶつと妙なことを呟いている。朦朧とした意識が一気に覚醒し、さらに彼女の言葉が頭に響いていく。

 ――……けどね。あたし、弱いからさ。

「こんな防壁は実験には……いや、まさか……」

 壊れていない篭手がある右手を須郷に隠しながら、力いっぱいに握り締めると、無理やりにアイアンクローを突破する。今こそ彼女との約束を果たす時だと、俺の身体が半ば自動的に動いていく。

「なにっ!?」

「うおぉぉっ――」

 意識が朦朧としていた筈の俺が、いきなり動いたことに驚愕する須郷を尻目に、足場と右手に出来うる限りの力を込める。闇だろうがなんだろうが、立てるならば何だっていい。慌てて何か呪文を唱えようとする須郷の人中に向かい、しっかりと狙いを済ましていく。

「システム・コマ……」

「――らあっ!」

 ――あんたがあたしの分まで、そいつをぶん殴ってよね――

 俺の右手は吸い込まれるように須郷の顔面へ叩き込まれ、あとは思いっきりぶん殴った。もうここまで来たのならば、悪い癖である四の五の考えている暇もなく、力を込めるのみである。

 須郷はそのまま闇の中を先の俺のように吹き飛んでいき
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