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SAO−銀ノ月−
第七十五話
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うと悲鳴の一つもあげないだろう? それは自殺を封じてからなんだよ。その意味が分かるかい?」

 どうするか、という手だてを考えながら逃げるものの、日本刀《銀ノ月》を失った今、何も対抗策も浮かばずにリズの射程外へ逃げていたが、遂に壁際にぶつかってしまう。何もない闇に見えたとしても、どうやら床と同じように壁はあったらしく、俺は彼女に追い込まれていく。

「つまり、口を開けることが出来れば、次の瞬間には舌を噛みちぎって死ぬ、ってことさ。いやぁ、素晴らしい精神だねぇ!」

 しかし不幸中の幸いというべきか、今の俺と彼女と須郷の位置は一直線。リズの攻撃を避けつつ残る武器である足刀《半月》で蹴りつけ、その勢いで須郷へ飛び込んで日本刀《銀ノ月》の破片を拾えば、確実に一太刀浴びせることが出来る。可能性は低いものの、《ペイン・アブソーバー》が須郷にも適応されていれば、そのまま勝負を決められるかも知れない。

「――――!」

 そう考えている最中、口を真一文字に引き絞った彼女が直線距離での突撃を仕掛けてくる。須郷の言葉を借りるのならば、彼女はただ『反射的』に俺へ攻撃を仕掛けてくるだけであり、フェイントや見切りなどのテクニックはない。……それが彼女なりの抵抗なのかも知れないが。

 なので壁際であろうとも、攻撃を避けるだけならば簡単なこと。日本刀《銀ノ月》がないため防ぐことは出来ないが、足刀《半月》と腕に仕込んだ篭手があれば、受け流しつつ反撃することも難しくない。

 リズに攻撃を避ける時の激痛と、反撃をした時の激痛を考えなければ、の話だが。

「…………くそっ」

 そして彼女がメイスの射程圏に入り、大きくメイスを振りかぶる。勢いをつけた頭上からの一撃必殺の攻撃……しかし、それ故に読みやすい。その攻撃を彼女の懐に入ることで避けると、無防備な腹に篭手で殴りつけ、浮いた身体に回し蹴りの追撃で壁に吹き飛ば――

「……出来るか」

 ――せなかった。そこまで反撃のパターンが一瞬で頭を横切ったが、俺はその場から動くことすら出来なかった。

「出来るか馬鹿野郎……」

 誰ともなくそう呟いた後、彼女の一撃が俺に炸裂する。俺は抵抗せず――強いて言えば、彼女の前で情けない悲鳴をあげないようにだけ、抵抗しつつ――甘んじてメイスの一撃を受け入れ、すぐ背後にあった壁に吹き飛ぶ。

「ゴフッ……」

 血を吐くような感覚を感じながら背中が壁に押し付けられ、ボールのようにバウンドすると再びメイスが迫り、左手の篭手で何とか防ぐ。しかし、彼女のメイスはその程度で止まるほど勢いは弱くなく、ガリガリと篭手の耐久値が減らされていく。

 いつしか左手の篭手が破壊されるとともに、左手が弾き飛ばされて胴体ががら空きになる。もう一撃喰らうのを覚悟する―
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