第四章 誓約の水精霊
第五話 燻る炎
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くなっちゃったらしいの」
「つまり?」
「つまり、秘薬が手に入らないから解除薬が造れないの」
「そう……か」
垂れた髪の隙間から、モンモランシーの縋るような目を向けられた士郎は、眉間に寄る皺を、右手の親指と人差し指で揉みほぐすと、ポツリと呟く。
「行くしかないか……」
「え?」
「俺がそこに行ってこよう。連絡が取れないと言うなら、こちらから行くしかないだろう」
「そ、そんなっ! し、シロウさんには関係ないはずでしょ?」
「確か惚れ薬は禁制品だ。モンモランシーには学校もあるだろうし、俺以外に誰か頼める人がいるのか?」
「それは……でもっ」
「その代わり、一つ頼みがあるんだが」
「え?」
士郎の提案に、戸惑いの表情を浮かべ士郎に向け身体を乗り出してきたモンモランシーを、士郎は右手で制する。
自分の瞳を怖いくらいの真剣な目で覗き込んでくる士郎の様子に、モンモランシーの頬がゆっくりと赤く染まっていく。
一体何を要求するのだろうと、次第に高鳴る心臓の音を抑えるように、モンモランシーは胸に手を当て士郎を見上げている。
そして、ゴクリとモンモランシーが喉を鳴らすのに合わせるかのように、士郎は突き出した右手の人差し指だけを立てると、ゆっくりと口を開く。
「媚薬の解除薬をつくってくれないか」
「…………は?」
頬を赤く染め、真剣な目で士郎を見つめる姿のまま、モンモランシーの口から間の抜けた声が漏れた。
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