暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第五話 燻る炎
[8/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
三人の姿を思い出し、顔に浮かぶ、苦悩による皺がますます深くなっていく。

「どうする」

 媚薬の作り方が書かれた本を確認してみたが、解除薬のことはどこにも書かれていなかった代わりに、本の末尾に、効果が半永続的であるという、最悪なことが書かれていた。そのことを知ったルイズ達が、血の気の引いた顔で驚愕の表情を浮かべるのを見て、俺に任せろと言ってみてはみたものの。

「……どうすれば」
「どうしたのよ?」
「なっ!」
「わっ!」
 
 突然隣から声を掛けられ、反射的にベンチから飛び離れると共に、一瞬にして投影した干将、莫耶をベンチに向けると、視線の先には、ベンチから転げ落ちそうになっているモンモランシーがいた。モンモランシーはベンチから落ちないよう、必死にしがみついている。士郎は慌てて投影を解除すると、モンモランシーをベンチの上に引き上げた。士郎は息を荒げながら、ベンチに身体を預けるモンモランシーの前に立って見下ろす。

「驚いたな。何でここに? ミス・モンモ――」
「……モンモランシーでいいわよ」
「そうか。それで、俺に何かようかモンモランシー?」
「あなた本当に貴族に物怖じしないのね。……まあ、いいけど」

 モンモランシーが名前で呼ぶように言うと、戸惑うことなく即座に名前を呼び、さらには自然にモンモランシーの隣に腰掛けた士郎に、呆れるような表情を見せるモンモランシー。

「ギーシュのことなんだけどね」
「ああ、そう言えば解除薬はまだ出来ていないのか? そろそろ何とかしないと、流石に明日も休むとなると、教師から怪しまれるからな」
「うっ……ま、まあ、そうなんだけど」
「どうした?」

 尻すぼみに消えていくモンモランシーの言葉に、訝しげな顔を向け問いかけると、モンモランシーは顔を俯かせぼそぼそと喋り始めた。

「その……売り切れだったの」
「売り切れ? ……まさか」

 この話の流れからして、売り切れといえば、解除薬のことしかないが、それでもまさかと言う顔で顔を俯かせるモンモランシーに向けると、モンモランシーは顔を士郎から逸らしながら小さく頷く。

「そうなのよ、解除薬のための秘薬が」
「……今度はいつ入荷するんだ?」
「その……それが入荷は絶望的だって」
「絶望的?」

 難しいではなく、未定でもなく、絶望的という言葉で応えたモンモランシーに、唸り声のような声を喉から上げると、モンモランシーは昨日の朝とは違い整えられた金髪ドリルの髪を、両手で掻き回すようにしながらも、士郎の言葉に頷いた。

「ぅぅう……そうなのよ。その秘薬って言うのが、ガリアとの国境にあるラグドリアン湖に住んでいる、水の精霊の涙のことなんだけど……」
「なんだけど?」
「それが最近、その精霊達との連絡が取れな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ