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剣の丘に花は咲く 
第四章 誓約の水精霊
第五話 燻る炎
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……。で?」
「う〜……え?」
「解除薬はないのか?」
「そ、それは……」
「ないのか?」
「ざ、材料費が」
「高いのか」
「……そうなのよ」
「……はぁ」

 俯き力なく頭を垂れ、地面に両手を着くモンモランシーの姿に、常に金欠の師の姿が重なる。今日何度目かの溜め息を吐きながら、白み始めた空を見上げながら、くしゃくしゃの金髪に手を置いた。

「?」
「いくらだ?」
「え?」
「いくら掛かる?」
「え……」
「はぁ……」

 士郎の言っていることが分からないと言うように首を傾げるモンモランシーに、アンリエッタから渡された金貨が入った袋を渡す。ずっしりとした重さと、ジャラジャラとした金属が擦れる音に、まさかと言う顔をしながら袋を開け、目を見開くモンモランシーは、錆び付いた機械のようにゆっくりと顔を上げ、士郎を見上げた。

「こ、これ」
「それで足りるか?」
「え、ええ。じゅ、十分に足りるわ」
「そうか」
「こ、これ、一体どうしたのよ?」
「それで解除薬を作るといい」

 モンモランシーの疑問に応えるとこなく、乱暴に頭を撫で繰り回し背を向けた士郎は、倒れ伏すギーシュを肩に担ぐと、職員用の宿舎に向かって歩き出す。ギーシュを抱えながらも、変わらない足取りで歩き去る士郎の背中に、モンモランシーは戸惑った様子で声を投げかける。

「あ……その、ギーシュは」
「解除薬が出来るのに、どれくらい掛かる?」
「え……あ、その、材料が揃えばすぐだから、大体一日ちょっとぐらい」
「そうか、それまで拘束して部屋に放り込んでおく。だから、出来るだけ早く完成させてくれ」
「えっ、あ、はい……」

 振り向くことなく、モンモランシーの御礼に、士郎は片手をひらひらと振るだけで応えた。朝霧の中に消えていくそんな士郎の背中を、モンモランシーは濡れた大地から立ち上がることなく、ただじっと見つめていた。










「しかし……どうするか」

 抑えようにも抑えきれない苦悩が浮かぶ顔を隠すように、顔を俯かせてベンチに座り込んでいるのは、赤い外套と黒い鎧姿の士郎である。悩みの種は、今も苦しい思いをしているルイズ達のことだ。モンモランシーの前から去った後、士郎がロングビルの部屋に戻ってみると、ルイズ達全員が目を覚ましていた。扉を開けると、まだ生まれたままの姿のルイズ達から攻撃を食らったりしたが、そこは重要じゃない……。

「やはり……効果はまだ続いている……か」

 シエスタだけでなく、やはりルイズ達も媚薬の効果が残っていた。そしてあれから一日以上たった今も、彼女達は、身体の奥に燃える官能の炎に耐えて仕事や授業を受けている。
 服を着るだけでも、漏れ出る嬌声を口を噛み締め耐えなければなかった
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