第四章 誓約の水精霊
第五話 燻る炎
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なら俺は帰るからな。また襲われないよう、ギーシュが起きる前にここから離れた方がいいぞ」
軽く溜息を吐いた士郎は、顔を俯かせているモンモランシーに、声を掛け立ち上がると、そのまま立ち去ろうとしたが、
「ま、待ってっ!! ちょっと待ってミスタ・シロウッ!!」
「ん? 何だ?」
焦ったようモンモランシーの声に足を止めると、士郎は朗らかな笑みを浮かべながら振り返る。モンモランシーは、胸元に手を置くと、縋るような視線で士郎を見上げている。見上げてくるだけで、何も言わず、ただ口をもごもごとさせている様子に、朗らかな笑みを浮かべた表情のまま、士郎は再度問いかけた。
「で、原因は何だ?」
「そ、その……実は……」
「惚れ薬、か」
長いこと躊躇していたモンモランシーが、肩を落としながら白状したのは、予想していた内の一つであったことから、驚きは少なかった。しかし、士郎は顔を俯かせ、小さくなっているモンモランシーに対し、責めるような強い口調で話しかけた。
「何故、ギーシュにそんなものを飲ませたんだ」
「あ……、そ、その……え、と……」
「いくらギーシュが浮気者だったとしても、こんなものを飲ませるのは、やり過ぎだぞ」
「っ……で、でも、だって」
「それにギーシュは、最初から君のことが好きだと言っていただろう、それなのに、なんでまた」
「う……うう」
「……で? こんなになったギーシュは、ちゃんと元に戻るのか?」
「…………あ」
「……おい」
士郎が話しかけるごとに、モンモランシーの背中が丸まっていき、最後の方になると、膝を抱えて丸まって小さくなっていく。朝露で濡れた地面の上に、丸くなって座り込む姿が哀れに思ったのか、頭を押さえ嘆息した士郎は、若干弱めた口調でギーシュが元に戻るかどうかについて問いただす。すると、モンモランシーは、あ、と今気づいたとばかりに声を上げた。膝を抱え丸まった姿で、呆然と口を開けた顔を向けてくるモンモランシーに、痛みを堪えるように、眉間に皺を寄せた顔で、士郎は突っ込む。
「で、でも大丈夫よっ! そ、その内効果も切れるはずだしっ!」
「で? 具体的にはどのくらいかかる?」
「え、え〜と、個人差があるけど、一ヶ月か、い、ち、年、後……か……」
「その間、あの状態のギーシュから逃げ続けるのか?」
「うっ! う〜う〜」
惚れ薬の効果が切れるまでの時間を思い出し、どんどんと顔色が悪くなっていくモンモランシー。その様子に、顎で倒れ込むギーシュを指しながら、薬の効果が切れるまでの間、どうするのか尋ねると、両手で頭を挟み地面に突っ伏した。
大きく溜め息を一つ吐くと、今にものたうち回り始めそうなモンモランシーの肩に手を置く。
「はぁ〜
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