第四章 誓約の水精霊
第五話 燻る炎
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の姿。
腕を組み、顔を俯かせ暫らくじっとしていた士郎だが、ベッドの下に落ちている毛布を、シエスタの身体に掛けると、ベッドに背を向け、無言で部屋の外へと出て行った。
パタリと小さな音を立てて背後でドアが締まると、ドアに背を預け薄暗い天井を見上げる。
「……どうする……」
その苦渋に満ち充ちた声は、誰の耳に届くことなく消えていった。
「しかし、どうするか……」
朝靄が煙り、視界が殆ど効かない中、士郎は眉間に皺を寄せ歩いていた。
シエスタの様子から、未だ薬……媚薬の効果が残っていることが分かった。今までの経験から、媚薬の効果は長くとも半日程度であるが、欲望を発散させれば、もっと短くなることを知っていた。だから、昨夜はかなり攻めてみたんだが……。
「ロングビルも解毒剤を持っていないというし」
昨夜の情事の最中に、息も絶え絶えのロングビルを責め……否、質問してみたが、薬の解毒剤を持っていないと。しかも、薬を造ったロングビル自身、媚薬の詳しい効果を全て把握しているわけでもないときた。薬の効果が二、三日で消えればいいが、もし、永続的な効果を持つものだったとしたら……。
「……厄介どころの騒ぎじゃないな」
立ち止まり、頭をガシガシと掻き毟っていた士郎だったが、ハッと顔を上げると、睨みつけるように視線を鋭く細めた。暫らくそのままでいると、朝靄の向こうから、少女の悲鳴が聞こえてきた。少女の悲鳴が耳に届くと同時に、士郎はすぐにも駆け出そうと足に力を入れる。
悲鳴が自分に向かってくることから、その場で踏みとどまり、どんなことにもすぐに対応出来るよう干将、莫耶を投影すると共に腰を落とし構えた。
「ん? ……この声……もし――」
「――ああああああああああっ! キャアアアアアッ!!」
響く悲鳴に、どこか聞き覚えがある気がして、士郎が唸り声を上げた瞬間、白い靄から、金髪ロールの少女が飛び出してきた。それは、ルイズのクラスメイトの少女、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシであった。
いつも綺麗に巻き上げられていた金髪ロールは、見るも無残にボサボサで、辛うじて丸まっているように見えるだけだ。鮮やかな青い瞳は、滝のように流れる涙でぼやけている。脇目もふらず走っていくモンモランシーは、士郎に気付くことなく、士郎の脇を通り過ぎて行く。
「いやっ、ちょ――」
慌てて振り返って声を掛けようとすると、モンモランシーの後を追いかけるように、男が白い靄の中から飛び出してきた。
「ももももっ! もんもっ!! モンモッ!! モンッモランシッ――――ッ!!!」
全身から水を滴らせ、明らかに正気じゃない目を爛々と
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