第四章 誓約の水精霊
第五話 燻る炎
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が寄る。その臭いから逃げるかのように、胸に感じる柔らかく暖かなものに、顔を押し付けた。
「む〜……ん? んふふふふ……ん?」
最初はその柔らかいものからも、青臭い臭いがして唸り声を上げたが、次第に甘い香りが匂ってきたことから、機嫌のいい声に変わっていった。しかし、ぐいぐいと顔を押し付けていると、柔らかな肌触りの奥に感じる、硬いゴリゴリとした感触が不快で、意識は急激に戻っていく。
「ふ、ぁ……あ、……あぇ?」
片手で、大きな欠伸をする口を塞ぎながら、身体を起こすと、未だ半開きの目で周囲を見渡す。身体を柔らかく受け止めるベッドの感触と綺麗に整えられた広い部屋、そして身体の節々に感じる疲労と痛み、下腹部の鈍痛と異物感等、いつもと余りにも違う周囲と感覚。何故自分がここにいるか分からず、ボーっ、と周囲を見渡していたシエスタだったが、片手で何かを抱えていることに気付き、視線を下にやると、ビクビクと痙攣しているルイズがいた。
「ふぅ……へっ?!」
「ぎゅふっ……」
思わず手を放すと、ルイズはくぐもった奇妙な声を上げてベッドに仰向けに倒れ込んだ。恐る恐るとルイズの様子を見守っていると、すぐに整った寝息が響き始める。
「はあ、よかっ――え? ええっ――え?」
その様子にホッと胸を撫で下ろしたシエスタは、しっとりと汗ばむ肌の感触を掌に感じ、初めて自分が裸であることに気付き、悲鳴が上がりそうになった。しかし、裸であるのが自分だけでなく、ベッドに突っ伏しているルイズも、そして、学園長の秘書であるロングビルも裸であることに気付き、悲鳴は口から放たれることなく飲み込まれた。
「ど、どうしっ――あ……そう、でした」
混乱が頂点に達する直前、自分がここにいる理由を思い出し、右手で未だに鈍痛と異物感を感じる下腹部を撫でた。
「そっか……昨日……」
抑えきれないとばかりに、顔に浮かぶ笑みは、羞恥、喜び、幸せ、様々な感情が入り混じった複雑なものであった。暫らくの間、下腹部を撫でていたが、窓から見える空が白み始めていることに気付き、仕事に行くため、ベッドから降りようとベッドの端に手をつくと、ドアが開くと共に、士郎が部屋に入って来た。
「ん? 起きたのか? おはようシエ……スタ」
「へ? あ……お、お早うございま……す」
士郎はベッドから降りようとするシエスタに気付くと、優しく笑いかけたが、不意にその笑みがビシリと固まる。シロウの挨拶に、シエスタもベッドに四つん這いになった姿で、戸惑いながらも挨拶を返そうとしたが、ハッと自分の今の格好を思い出し、口を開けた姿のまま固まってしまう。
士郎の視線の先には、肌も露わに四つん這い姿のシエスタの全身が、一瞬で真っ赤になる様子がハッキリと見えた。
慌て
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