第十三話
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殿は苦笑いを返している。
無粋なことを聞いてしまったとは思ったが、それに構わず夕殿が言葉を続けている。
「恋焦がれてどうにもならなくて、お慕いしていると打ち明けたことがございます。
その気持ちには応えられないと言われてしまいましたけれども、しっかりと私の気持ちを受け止めて下さいました。
女の方に惚れるなんて、と悲観して死ぬことも考えました。けれど……今はそれもいい思い出ですわ。
景継様を好きになって良かったと、胸を張って言えます」
胸を張って、か。そう言うだけあって夕殿は何処か誇らしそうでもあった。
姉上を好いたことをそう言ってくれるのはとても嬉しいことではあるが、でも純粋に喜べそうにはなかった。
「羨ましいな……それは」
誇らしげに言える夕殿が羨ましいと思う。いつか、俺もそう言えるようになるだろうか。
ずっと思い続けてきたこの気持ちに終止符が打てる時が来るだろうか。いい思い出、などと言えるようになるのだろうか。
「……俺も、ずっと姉上を慕っていた。血の繋がった、しかも双子の姉を好きになるなんざまともじゃねぇと思って、必死に堪えてきた。
生涯それを打ち明けることなく心の奥底に封じておくつもりだった。だがそれを」
政宗様に暴かれた、とは言えなかった。秘めておくはずだったものだが、人に暴かれるようではとうに筒抜けだったのかもしれない。
周囲も俺を気遣って、ただ気付かない振りをしていてくれたのかもしれない。
姉上も、もしかしたら……。
「……知られてしまった。俺のやましい気持ちを、姉上に打ち明けちまった……
出奔するようにと言ったのは俺だが、こうなる原因作ったのは」
俺のせいだ、そう続くことはなかった。何故かと言えば、夕殿にしっかりと抱きしめられていて言葉にならなかったせいだ。
「やましい、などと……自分を傷つけるようなことを言いなさいますな。
景継様はきちんと受け止めて下さったのでしょう? そうでなければ、誰かに片倉様を頼むなどと仰ることは致しません。
……景継様は気さくでお優しい方です。片倉様がそうやって自分を苦しめるようなことをされていると知れば、
きっと御心を痛められることでしょうに」
確かにそうだ。何かにつけて心配していたあの人が今のこの状態を望むはずがない。
死ぬなと言われたが、死んでしまおうかと思ったことは何度もあった。
これ以上恥を晒して生きるくらいならば、いっそのこと死んでしまった方が、などとも思った。
だが、それは自分が楽になっても姉上の為になるどころかかえって苦しめることにしかならない。
ならば、恥を晒してでも生きていかなければならねぇ。それが姉を好いた俺の罰だと思っていた。
「夕殿」
「景継様ならきっと大丈
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