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101番目の舶ィ語
第十一話。人喰い村からの脱出
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ん。あんたはあたしに巻き込まれただけでしょ」

「いや、だけど……」

「いいの。別に気にしていないから。それに、なんだろ」

「うん?」

「怖いし、戸惑ってるし、落ち着かないけどさ。でも……なんでかは知らないけど、なんとなく大丈夫って気がしてるのよ」

「大丈夫……?」

「うん。なんだか怖い村なんだけど、同時に懐かしいっていうか……」

「懐かしい? この人喰い村が?」

それは意外な言葉だった。
改めて音央の顔を見てみるが、当人もなんでかは解らないような、迷っているような面持ちで。

「うーん……ノスタルジックかな」

そんな事を呟き、考え込んでいる。
実は俺も似たような感覚をさっきから感じていた。
デシャヴっぽい感じなんだが、何故か妙にこの村が懐かしく感じるんだ。
知っている場所のような、やっぱり知らない場所のような、不思議な感覚。

「そういえばさっきも言ってたね。知っている気がするって」

「うーん。でもちゃんとした記憶はないのよ」

考え込んでいた音央はやがてふるふる、と頭を振って言った。

「懐かしい風景、って誰にでもあるのかもね」

「かもしれないね」

それが心の中で描く原風景的なものなどならいい。
あるいは家族や友人と遊びに行ったキャンプやバーベキューで感じたなら感動して終わるだけだろう。
だが、目の前の現実は違う。
今の俺達は危険にさらされているんだ。
……悔しいな。
音央の横顔を見てみる。
彼女だって、まさかこんな事になるなんて思ってもいなかっただろう。
当たり前のように、『何もありませんでした』で調査は終わり当たり前の日常を過ごしていく。
そんな程度の気持ちだったに違いない。
それなのに、今はこんな事になっている。
そういう当たり前の日、というもので……終わらせてやりたかった。
それができないのが悔しい。

「音央は後悔していないか?」

「うん?」

「……こんな事なら、とか思ってるか?」

こんな事なら、ああすれば、こうすれば……。
たら、なら、ればをいい始めたらキリがないが、そういう気持ちになってしまっても仕方ない事だと思う。
だけど音央はあっけらかんと言い放った。

「そんなの、今思ってもしょうがないでしょ?」

そして、目を細め。ちょっとだけ俺の方に身を寄せてきた。

「後悔なんて、すっごく安心した時にすればいいの。今はまだ危ないんでしょ?」

「ん……そうだね」

その言葉は、正しくその通りだった。女は度胸と前世の幼なじみがよく言っていた気もするが……音央の度胸も半端ない。

「だから、無事にここから出て、それから後悔すればいいのよ」

「そうだな。今は出る事を優先しようか
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