暁 〜小説投稿サイト〜
カードキャプターさくら〜旅人たちと小さな夜と不思議なお店〜
第1話 "小夜の対価"
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私は、あの日、あの場所で何を得たのだろう。

勝者には、褒美を──
敗者には、罰を──

彼が、七原文人が言った言葉だ。
それを決めるために文人が、浮島で行った実験。
"更衣小夜"として、過ごしたあの夏。
記憶を上書きされ、偽りの友、偽りの町と町人、偽りの教師とクラスメイト、偽りのカフェの店主、偽りの父親。
そして、偽りの名前──
そんな偽りだらけの日々のなかで、得たモノがあった。
父、更衣唯芳。
彼は、古きものと人の間に産まれた存在だった。
だからこそ、唯芳は小夜と暮らしていた。
その役をおった。
人の形をした、人でないモノ。
唯芳は、自分と同じ存在に、出逢えたことに悦びを感じていた。
小夜の場合は、少し違った。
偽りの記憶の中て与えられた父親。
父親、という設定の男。
だが彼の大きな愛に、記憶が戻ってからも父親というかけがえのない存在には変わりなかった。
否、かけがえのない存在へと変わっていた。
私たちは、いつの間にか父と娘となっていたのだ。

だからこそ、復讐を決めた。
自分の時間を弄ばれ、唯芳を、父を利用した。
復讐には、十二分な動機だった。

しかし、文人との東京での最終決戦。
彼は、小夜が左鎖骨に突きつけた刀を、自らの意思で心臓の前まで持っていき、小夜を抱き寄せ、突き刺した。
心臓を貫かせた。
そして、こう言った。
『ごめんね、小夜。僕がまだ人間なら、君の呪いは解けたことになったのに──』
"呪いを解く"
この言葉からは、偽りも悪意すら全く感じられなかった。

実験も、勝者と敗者わー決めることも、小夜の存在と伝説を知った文人なりの良心だったのだろうか。
それとも、■■だったのか、もう誰にも判らない。



「結局、私は、勝ったのか………負けたのか……」
小夜は呟く。
歩く。
夜の道を、歩いていく。
肩に提げた、細長い布袋を揺らしつつ歩く。
風が吹き抜けていく。
雲が動き、形を変え、割れていく。
そして、月明かりが小夜を照らした。
『知りたいか?文人の想いを、その源を』
後ろから声がした。
「やっときたか」
と小夜が振り返る。
『嗚呼。"対価"を伝えるために』
振り返ったそこには、一匹の犬がいた。
顔に不思議な模様のある犬だ。
『で、知りたいか?文人の真実を』
「…………。別にいい。どうせまた、"対価"が必要なのだろう?」
『もちろんだ』
「………ならいい」
『そうか』
"対価"とは、何かを得る為に叶える為に支払う代金のようなモノだ。
それが、記憶でも、形見でも、魂でも──
しかし、"対価"には決まりがある。
与えすぎてもいけない、奪いすぎてもいけない。
過不足なく、対等に、均等に、
でないとキズがつく。
現世の躯に
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