第十一話
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悲しくなってくるけども……それに子供を産めない私には、
御屋形様に期待されている立場の人間の側にいるわけにはいかない。
やっぱりこれはお給料貰って早々に退散しないと、ちょっとめんどくさい事になりそうな予感。
「旦那!」
二人だけの空気の中に遠慮なく割って入って来たのは佐助、幸村君は不愉快そうな顔をしていたけれど、
佐助の表情を見ればそれどころの話ではないことなどすぐに分かる。
いつもは無粋だと思う佐助の登場に、今回ばかりは救われたような気持ちになっていた。
「越後の上杉謙信が甲斐に攻め入ろうとしているとの情報を得た。
御屋形様が準備が整い次第すぐに出立すると仰せだぜ」
「おおっ、ついに雌雄を決されるということだな」
越後の上杉謙信と御屋形様はライバル同士で、ずっと二人は争ってきたという。
今回、その戦いに終止符を打つべく上杉謙信が動いたらしい。その情報を聞いて御屋形様が動くことになったわけだけど。
雌雄を決する……かぁ、きっと見物なんだろうなぁ。
軍神と甲斐の虎の戦、後学の為にも見てみたいなぁ……いや、無理なのは分かってるけどね。
「で、もう一つ……その戦いに水を差そうって奴がいるんだ」
誰だ、そんな無粋な事をするしょうもない輩は。漁夫の利を得ようってか?
どうせならきちんと雌雄を決させてやろうよ。全く、どういう奴か見てやりたいわ。
そういう奴は絶対に小物だよ。器のちっちゃい奴。
「独眼竜伊達政宗率いる奥州の軍だ」
うちかぁあああああ!!!
思わず四つんばいになってがっくりと項垂れた私を幸村君は心配そうに見ていたが、気にせず話を続けてもらう。
佐助の説明を聞く限りでは、やっぱり思った通りに漁夫の利を狙って攻め込む腹でいるらしい。
おいおい……なんでいきなり甲斐や越後に来んだよ。
先に押さえておかなきゃならない国はいろいろとあるでしょうが……。
つか、小十郎何で止めなかったの。最上や佐竹は大丈夫なわけ? あの辺隙あらば奥州へ攻め込もうって腹じゃん……。
いや、止めたけれど無理に押し切られた、って考えた方が良いかもしれない。
きっと小十郎が血を吐くような思いで策を練り上げてるんだわ。多分ね。
ある程度事情を話した佐助が話を切って、じっと私を見ている。
その視線に何を言いたいのか分かったけれど、あえて黙っていれば佐助がきちんと言葉にして問いかけてくる。
「……アンタ、どうする?」
どうするって……政宗様が来るんなら答えは一つしかない。
これ以上ここに留まっていても良いことは一つも無いしね……。
「……お給料、今日までの分精算して貰える?」
幸村君には引き止められたものの、でもどっちにし
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