第八話
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えないとこっちがスタミナ負けするわ。
「それだけの強さがありながら、手篭めにされそうになったとは……信じられませぬな」
そんなことを言う幸村君に、私はほんの少しだけ眉を上げた。
はは、言ってくれるじゃないの、幸村君。でもね、残念ながらそういうのは武術の腕云々じゃないのよ。
男には理解し難いかもしれないけどね、どんなに強くたって恐いものは恐いんだから。
「じゃあ、例え話を一つ。もし御屋形様が幸村君の寝所に入ってきて何も言わずに抱こうとしたら、抵抗出来る?」
「なっ……そ、そんなこと御屋形様が……」
「するかしないかじゃなくて、抵抗出来ないでしょ?」
こんな例え話に初心なのか真っ赤な顔をしていたものの、
抵抗出来ないことを分かってくれたのか少しばかり落ち込んだ顔を見せていた。
まぁ、多分察してくれている気持ちは違うとは思うけど、抵抗出来ないってことだけ分かってくれればそれでいい。
「……すまぬ、馬鹿なことを言ってしまった」
分かってくれれば宜しい。でも、落ち込んでる暇はないよ? 勝負はまだ終わったわけじゃないし。
軽く踏み込んで棒を払い落としてやり、目前に木刀を突きつける。
「勝負あり。油断大敵だよ〜? これが戦場なら問答無用で殺されてるね」
「くっ……この幸村、慢心しておりました! 御屋形様ぁー!!!!」
いや、御屋形様いないじゃん。つか、いちいち叫ぶの止めようよ、声枯れてるんだし……。喉壊れるよ?
「で? 勝敗は決したけど、どうすんの?」
仕事を決める為に、ってことで始めた勝負、これで有耶無耶にされるとかなり困る。
いい運動にはなったけど、何のために一汗掻いたか分からなくなっちゃうもん。
「某、感激致した! 女子の身でこうまで強く練り上げるとは! 小夜殿には是非とも某の側近に」
ちょっ……側近って、そんなに簡単に決めていいもの!? いやいや、おかしいでしょう。
普通そういうのは信頼関係きっちり作り上げた人を側に置くもんなんだからさぁ。
ついさっき拾ってきた人間据え置いちゃ駄目だよ。
っていうか、側近いないの? それなりの身分なんじゃないの? 君は。
「ちょ、ちょっと待って。そんなに偉い身分になる気はないの。
あんまりこっちですっごい役職に着いちゃうと、実家の弟に迷惑がかかるから……せめて、侍女とかそんなもんで……」
ほとぼりが冷めるまでの出奔だってのに、甲斐で武田信玄の側近の側近になりましたー、とか
本当に洒落じゃ済まなくなっちゃうもの。帰れなくなっちゃうわよ。
あの政宗様のことだ、知ったら戦でも仕掛けてくるんじゃなかろうかと思ったり……。
「そう言うのならば……ならば、某の身の回
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