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竜のもうひとつの瞳
第二章〜甲斐でお世話になることになりました〜
第六話
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いと
連れ戻されちゃうから」

 今頃ひょっとしたら連れ戻すとか行って黒脛巾組をそこかしこに放ってるかもしれない。
ひょっとしたら戦の準備くらいまで整えて出発しようとしてるかもしれない。
まぁ、小十郎がいるから大丈夫だとは思うけども……ああ、でもやりかねない。そう思ったら頭痛くなってきた。

 「何という愚かな!! 女子を手篭めにしようなどと男の恥!!」

 「……恥は分かったけど、そんなデカイ声で言わないで。
慰み者にされたみたいに聞こえるじゃないの。まだ未遂だから」

 しかし少年はそれが聞こえているのかどうなのか、私の言葉を無視して一人怒りに燃えている。
その隣で様子を見ていた男は呆れたように溜息を吐いて、頭を押さえている。
止めてくれるのかとも思ったんだけど、これは放っておくしかないって顔が何とも言えなかった。
怒ってくれるのは良いんだけどもさぁ、そんな全力で怒られてもこっちも困るよ。
本当に慰み者にされたって思われたら洒落にならないし。
私も呆れ顔で溜息を吐こうかと思ったところで突然少年に両手を掴まれて、しっかりと握られてしまった。

 「さぞかし辛かったであろう……しかし女子が一人で一人旅などと危険極まりない!
団子の礼もある、某の屋敷で働かぬか。身の安全は、この幸村が保障する!」

 「ちょ、旦那!?」

 少年の行動があまりに急展開過ぎてついていけない。だってさ、いきなり雇ってくれるなんてねぇ?
それ以前にいいの? 何処の誰かも分からない女をそんな簡単にスカウトして。
っていうか、今“幸村”って言ったよね。甲斐で幸村っていやぁ……真田幸村しかいないじゃん!
ええーっ、BASARAだとこんなになっちゃうの!? ……あ、でも、こっちの方が煩いけど可愛いかも……。
少なくとも政宗様よりかはいい。暑苦しいけど素直そうないい子っぽいし。

 「ええっと……そんなに持ち合わせがないから、仕事を紹介してくれるのは有難いけど……いいの?」

 ちらりと隣の男を見れば、男も本当に困ったような顔をしていた。
そりゃそうだ、私の同じ立場なら同じ顔するもん。どういう素性か分からないような奴を屋敷に入れるなんてさ。
いや、その前に小十郎と二人して政宗様をぶっ飛ばして有無を言わさずに黙らせると思う。
しかし、彼に至っては同様の手段で止めることも出来ないようで、男の制止も構わずに私にきっぱりと言い切ってしまった。

 「構わぬ、問題などあるはずがない! 某は真田幸村と申す、そなたは?」

 「ええと……小夜(さよ)です」

 「小夜殿か!よろしく頼む!」

 屈託の無い笑みでぶんぶん腕を振られて痛いのなんのって。握力も強いし余計に痛いんだってば。

 ……まぁ、とりあえずこれで野宿
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