1.一通の手紙
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彼女が部屋に戻る頃には、もう夕日は沈もうとしていた。
扉に首からかけていた十字架のネックレスを近付けると、カチッという音とともに、彼女にとってはいつも通りの空間が広がった。
ミナの寮部屋は、女の子らしく、だけど綺麗に統一感のある部屋だ。
白と空色で統一された家具。ちょこんとアクセントにある青色などのペン立て。黒と白のモノクロのベッド。
シンプルだが、とても可愛い部屋だった。
さっきの授業で使った荷物を明るい茶色をした机の横に置き、彼女はベッドのほうへフラフラと歩き、どさっと寝転がった。
そして、天井を見ながら手を伸ばしてみるが、そこには学校指定の小さなシャンデリアが飾ってあるだけ。
何かをつかもうとしても、そこには何も無く、ただ空を切るだけだった。
「………はぁ」
小さく溜息をつくとゴロンと転がり、うつ伏せになり、腕を枕のようにして、ふと思いふけった。
(さっきのユキナの顔は、どうみても作り笑顔…)
ミナのほうへと駆けてくる時に、咄嗟に作った笑顔なのだと確信していた。
彼女は人をみるのが上手い。
相手の感情などを表情で読み取ることが得意としているのは、この学校でミナぐらいかもしれない。
私立、スニュニア学園。
一般の世界とはかけ離れた世界に、大きく佇む学園。
その学園では、ある一つの事を重点的に教えている。
―――魔法―――。
一つ間違えれば相手を殺すものに。下手をすれば、犯罪者にもなるものだが、しっかりと使えば、とても便利になるものだ。
そんな学園で、ミナは一年一年を過ごしているのだ。
(何かあったのかな…)
そんな風に思い耽っていたミナだが、ふわりと空いていない窓のほうから、薄黄色に光った紙が飛んできたのに彼女は気付き、窓を開けた。
最後の授業が終わってから部屋に入ってしまうと、出ることも、魔法を使い、友達に手紙を送ることも禁じられているのだが。
「…屈折魔法」
薄黄色に光る魔法は色々あるのだが、規則に触れることをおかしてまで、紙を送ってくる事から、瞬時にミナは把握した。
屈折魔法。それは、光を操る者の中で中級と呼ばれている魔法で、物の前で光を屈折させ、物を見えなくするという魔法だ。
もちろん、屈折するだけなので、普通のは物のある上のほうに見えたりするのだが、魔法上級者になってくると、その屈折した光さえも消せるといわれている。
そんな魔法が掛かった手紙が、窓の目の前で停止した。
魔法は禁止されている時間なので、部屋まで入ってくる事は不可能なのだ。
「…………」
(何があるのかは分からないけど…)
ミナは恐怖と興味の狭間に立たされながらも、手紙へと手を伸ばした。
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