三十八 開幕
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一切容赦無し。クナイや煙玉といった忍具、飛び道具に口寄せ動物、なんでもありだ。どちらか一方が死ぬか、負けを認めるまで…。ただし勝負が着いたと俺が判断したら、そこで試合終了。分かったな?」
そこまで話してから、今思い出したかのようにつけ加える。
「あー…ちなみに自分の試合までに到着しない場合、そいつは不戦敗とする―――じゃあ一回戦」
飄々とした態度の審判に反し、少年少女達は皆ゴクリと生唾を呑んだ。各々の双眸が緊張の色に満たされる。
「波風ナル。日向ネジ。その二人だけを残して、他は会場外の控室まで下がれ」
名を呼ばれたそれぞれが表情を引き締めた。特に唇をぐっと一文字に結んでいるナルをシカマルは気遣わしげに見つめる。
憂色を漂わせる同期二人の視線に気づいて、ナルはにっと笑みを形作った。わざと威勢良く振舞う彼女の肩を、シカマルとシノが励ますように軽く叩く。
後ろ髪を引かれながらカンクロウ・テマリに続いて控室へ向かう。なぜか一番最後まで残っていた我愛羅が底の知れぬ瞳でナルを見ていた。無言で一瞥を投げ、やがて踵を返す。
これから始まる試合に湧く観客達。選手を賭けの対象にしている無粋な連中が、自身の不利となる受験者へ野次を飛ばし始めた。その野次の大半はナル一人に向けられている。
大声での非難や揶揄を一身に浴びながら、ナルは対戦相手の顔を睨み据えた。彼女の強い眼力に、ネジが挑発的な冷笑を漏らす。
「…なにか言いたそうだな?」
彼の挑発に乗らず、ナルは拳を前に突き出した。予選でヒナタを死ぬ一歩手前まで追い込んだネジを、静かな、だが鋭い双眸で見据える。
「ぜって――勝つ!!」
その宣言に、ピキキ…と白眼を細めるネジ。ナルの全身からは男にも劣らぬ闘気が溢れ出していた。
特に爛々と力強い輝きを放つ彼女の瞳は見事なまでに澄んでいる。運命に縛られている自分と違い、まるで自由な空の如きその青が、ネジには癪だった。
「その威勢がいつまで続くか…。本当の現実を知った、その時の落胆の目が楽しみだ…」
皮肉たっぷりの言葉を発す。青く澄んだその空を一刻も早く曇らせてやろうとネジは嘲笑した。
双方の意気込みを感じ取ったゲンマがついと片眉を上げる。さぁてどうなることか、と抜からぬ顔で、彼は口を開いた。
「では第一回戦――――始め!!」
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