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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十八 開幕
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席にて、三代目火影は思案顔で対戦場を見下ろした。

そこに立ち並ぶ少年少女は油女シノ・奈良シカマル・波風ナル・日向ネジ――木ノ葉四名と、我愛羅・カンクロウ・テマリ――砂三名。音の多由也と、そして今回最も注目されている人物―うちはサスケの姿は何処にも見当たらない。

傍で待機していた並足ライドウが腰を屈め、三代目にそっと耳打ちした。
「暗部数名のチームで依然捜し回っていますが、まったく……」
より一層声を落とす。三代目にしか届かぬ小声で、彼は自身の懸念を打ち明けた。
「…もしかすると既に大蛇丸の手に…。そうなっていてはもう見つける事は……」
ライドウの言葉に三代目は静かに双眸を閉じる。ややあって、こちらへ近寄る気配を感じ、彼は目線を上げた。
「おお…これはこれは、」
二人の側近を引き連れたその者へ外交辞令を告げる。

「風影殿!遠路遥々、よくぞお越し下さった…っ」
風影と呼ばれた男は三代目の顔を見て、どこか懐かしむように瞳を細めた。





晴れ舞台となる会場で、彼らは佇んでいた。溢れんばかりの観客達に嘲笑を投げ掛ける。
何れ戦場となる地で、何を浮かれているのか。
視界を覆うお面の奥で目を細める。そうして観戦者達が身を乗り出しているのを尻目に、手ぐすね引いて彼らは待ち望んだ。
来たる鬨の声を。






三代目火影が本選開始の挨拶を終える頃、少年は腕をぶらんと垂らした。彼の眼前には修行の成果とも言える瓦礫が山を成している。
不意に少年を見守っていた青年が顔を上げた。傍の柱石へ視線を転ずる。抉れた岩々が立ち並ぶ荒野で、カカシは鋭く呼び掛けた。
「……誰だ?」
呼び掛けに応じて、岩陰から彼は姿を現した。カカシの声で顔を上げたサスケが瞳を瞬かせる。

突然来訪したその人物は、この場にはいないはずの者だった。

「一か月振り、ですね…」







「これより予選を通過した九名の『本選』試合を始めたいと思います!どうぞ最後までご覧ください!!」
中忍選抜試験開始の合図を告げる。諸国の大名や忍び頭を含めた観光客に見守られる中で、三代目火影は高らかに開会の挨拶を述べた。
式辞を終え、ふうっと席に腰を下ろした火影に、風影が水を差す。

「…九名なら…二人、足りないようですが?」
「………」

風影の問いに火影は何も答えなかった。風影も返答は期待していなかった。
その理由がなぜか、己が一番知っていたから。



「いいか、てめーら。これが最後の試験だ」
審判を務める不知火ゲンマが柄の悪い口調で話し始めた。目前の子ども達の顔触れを確認し、それから淡々と注意事項を語る。口に咥えた千本がやる気なさげにゆらゆら揺れた。

「地形は違うが、ルールは『予選』と同じで
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