三十八 開幕
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時ナルトが去り際に残した言葉がずっと気にかかっていた。
「本選当日、大切な友達が本選前に演習場を立ち寄る」
不確かな未来を予期するような物言いに当惑したものの、出来ることならナルを応援したいといった想いが彼女をこの場へ導かせた。故に、観戦しようと同班の犬塚キバに誘われた際、彼との待ち合わせにこの場所を指定したのである。
正直なところ、半信半疑でヒナタはこの演習場へ赴いた。
手持無沙汰に、ナルトが背にしていた丸太の木目を眺める。その途端、いきなり背後から声をかけられ、ヒナタは本気で驚いた。
予言通りに演習場へナルがやって来た。その事実が彼女の心をかき乱す。
「あのさあのさ!訊いてもいいってば?」
「え!…う、うん…。なに…?」
おもむろに声を掛けられ、狼狽しながらもヒナタは頷いた。
話し掛けた本人であるはずなのに躊躇う素振りを見せるナル。暫し視線を泳がした彼女は、やがてガバリと顔を上げた。
「――――――の印の結び方を教えてほしいんだってばよ!」
術の名を挙げられ、ヒナタは目を丸くした。誰かに頼るといった行為など一度たりとも無かったナルが、自分を頼っている。
何も言えずにいるヒナタをナルはおそるおそる見つめた。秘密を打ち明けるかのような口振りで話し続ける。
「その、オレってばさ…。今まで頼ることは甘えだって考えてたんだってば。ずっと悪いことなんだって思い込んでた…」
「そ、そんなことないよ!」
ナルの言葉を遮るように、ヒナタは声を上げた。熱意を込めた声音で一生懸命言い募る。
「全然、悪いことじゃないよ!わ、私…ナルちゃんの力になれたらいいなって、いつも思ってた。だ、だから私を頼ってくれて、とてもうれしい…」
「うれしいんだよ」と今一度訴えて、大声を出したことを恥じるようにヒナタは丸太に身を寄せる。熱弁していた彼女の変わり様にナルは目をパチパチ瞬かせた。照れ臭そうに頭を掻く。
「ナルトって奴のおかげなんだってばよ」
不意に聞き知った名前を告げられ、ヒナタは目を見開いた。動揺する彼女に気づかず、ナルは言葉を続ける。
「頼るってことが悪いことじゃないって、そう思えるようになったのは…」
いつから独り暮らしだったのか。それすらも忘れてしまった。ただいまと言っても返ってこない返事。何時まで経っても感じないぬくもり。
季節は巡っても、ナルの心は冬だった。殺風景な部屋で独り、いつも膝を抱えていた。
まるで自分独りだけが世界から取り残されてしまったような。しんしんと雪が降り積もる、寂然とした空間。
色のないモノクロの世界。周囲が色鮮やかな日々を送る中、彼女独り白黒の空間から脱け出せない。
誰も教えてくれない。導いてくれない。助けてくれない。救ってくれない。手を差し伸べてくれない。
だから自
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