第19話〜蒼穹の大地〜
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外を見やる。そんな彼にかける言葉もなく、聞こえてくる貨物列車の走行音が大きくなるだけだった。
「・・・へえ、士官学院で士官学院の実習なんかで高原に行くのか。軍人のタマゴってのも色々大変なんだなぁ」
「はは・・・まあ、それなりには」
トンネルの多い山間部を出たり入ったりし、その間に昼食を済ませて一同でしばし談笑していると、乗組員らしき若い男性がガイウスに挨拶しながら、この列車に乗った目的を尋ねてきた。実習地が実習地だけに学生が乗っているのは珍しいのだろう。ガイウスが士官学院で行っている特別実習について簡単に説明すると、関心半分同情半分といった感じでコメントする男性。リィンは苦笑しながら返している。こんな風変わりな取り組みをしているのは、士官学院といえどもトールズぐらいで無理もないが。
「しかし、あの時のお前さんがそんな制服を着ているなんてなぁ。馬子にも衣装っていうか、なかなかカッコいいじゃないか」
「そうか・・・ありがとう」
その後も、男性と他愛の無い話をして、「ゼンダー門まで後二時間ぐらいだからのんびりしててくれ」と言い残し、去って行った。
「春に士官学院に来るときに知り合ったのか?」
「ああ、その時も同じ貨物列車でな・・・帝国の習慣について色々と教えてもらった」
「それは助かったでしょうね」
「ああ、オレを士官学院に推薦してくれた恩人も含めて色々な人に世話になっている。これも風と女神の導きだろう」
「風と女神か・・・フフッ、貴公らしい」
貨物列車がアイゼンガルド連峰を通り過ぎていく中で、実習地への到着を心待ちにしながら、一同はうたた寝したり、談笑したりとそれぞれの時間を過ごした。
−ゼンダー門−
「おお、やっと到着したか」
「叔父上・・・!お久しぶりです。ご壮健そうで安心しました」
「中将・・・ご無沙汰しています」
「うむ。久しぶりだな、わが甥よ。ガイウスは数ヶ月ぶりになるか」
片道にして約8時間。列車での長旅を経て、終点に到着したケイン達を迎えたのは、右眼に眼帯をした帝国正規軍所属と見られる初老の男性だった。短く刈り上げられた茶髪に、猛禽類のように鋭いもう片方の目。アレスとガイウスが挨拶を交わすその将官へケイン達も会釈をし、自己紹介をする。
「フフ、噂には聞いていたが面白い顔ぶれが集まっているようだな・・・帝国軍、第三機甲師団長、ゼクス・ヴァンダールだ。以後よろしく頼む」
「<<隻眼>>のゼクス・・・その、お噂は聞き及んでいますよ。こちらこそ宜しくお願いします」
口元に柔和な笑みを浮かべて、名前を名乗るゼクス。ケインはそんな彼と握手を交わしていた。
「ケインは中将と知り合いなのか?」
「いや、まったくの初対面だよ。けど
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