8話 「パワフル・レディ」
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ように、その周囲の6匹が一斉に地を駆ける。
右へ左へ、前へ後ろへと目まぐるしく入れ替わって狙いを定められぬよう有機的に絡み合い、チームプレーで獲物をズタズタに切り裂く。それこそエッジウルフの最も基本的な狩りだ。
だが、狙いを定める必要がない彼女にとっては相対距離だけが大事であり、後はどうでもよかった。
「お、丁度いい距離ですね?では……」
舌なめずりひとつ。細い指をトリガーにかけたカナリアは、その破壊力を解き放つために指を引いた。
「スプラッシュ・バウン、ファイアッ!!」
バウンッ!!という大きな炸裂音と共に両腕に構えられた携行砲の下部砲身が同時に火を噴き、細い弾丸を大量に吐き出した。複数の弾丸が命中した衝撃で突進する魔物が吹き飛ばされる。
散逸の名の通りに空間全てを塗りつぶすように放たれたニードルバレットは放射線状に噴出し、エッジウルフ六頭の肉体に容赦なく突き刺さっていた。
ある者は足をやられ、ある者は眼球を潰され、その衝撃に獣たちの血が飛び散る。当たり所の悪かった者は内臓を抉られて既に虫の息に。決して剣では再現できない、残虐な光景。獣たちの唸り声が恐怖を帯びた悲痛なものに変わる。
――が、そんなものに耳を傾けるほど暇ではない。カナリアは顔色一つ変えずにトリガーに手をかけて、今度は上部の砲身から弾丸を発射する。
「次撃、マシン・バウン!!」
今度はまっとうな徹甲弾が矢継ぎ早に砲身から吐き出され。硝煙とマズルフラッシュが周囲に散らばる。既にニードルで動きを封じられていたエッジウルフ達は、その刃を届かせることもなく遠距離から叩きこまれた雨のような銃弾によって息絶えた。
「こ、これは……確かに効率はいいが、なんとあっけない……」
そう呟くクワブキの声が数かに震える。
そう、その光景は剣や斧を使用する彼等からしてみれば余りにも作業的で、戦いというよりは狩りか虐殺だった。己の剣も届かない場所から圧倒的な物量と破壊力で蹂躙される、そんな光景を思い浮かべて身震いする。
「いや待て!さっきのボス狼がまだ……!」
はっと我に返ったアマルダが叫ぶ。そう、レンジ外から様子を見ていたあのエッジウルフがまだ倒せていない。
そう気付いた時には既に遅かった。
仲間の死体と抉られた足場を潜り抜け、狼の牙が彼女の眼前に迫る。
ヒトの喉笛など簡単に食いちぎれるその顎を大きく広げたエッジウルフが目に映すもの。
それは今から食いちぎる得物――ではなく、携行砲の砲身だった。
「ギャウッ!?!?」
「どっ……せぇぇええええええええいッ!!!」
とっくにその吶喊に気付いていたカナリアは、携行砲をナックル代わりに全力で腰を捻り、カウンターの要領でエッジウルフの
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