暁 〜小説投稿サイト〜
リメインズ -Remains-
8話 「パワフル・レディ」
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 それにしてもエッジウルフか、とファーブルは黙考する。
 群れで行動する魔物で、エッジの名の通り身体から鋭い刃物のような骨を生やして戦う。身のこなしは俊敏で、その速度から繰り出される斬撃は、威力こそ弱いものの一度に複数の傷を負わせられる厄介な敵だ。
 剣を抜こうとしたブラッドは、しばしの黙考の後に後ろに声をかけた。

「カナリア、先行して吹き飛ばしてこい」
「えっ!?カナリアちゃんを一人で行かせるんすか!?」
「ブラッド殿。流石にそれは危険では?」

 クワブキとアマルダが非難の声をあげる。外見上は小柄な少女だ。それを命の危険がある魔物相手に一人で立ち向かわせるのは、一見すると非道な対応に見える。
 だがブラッドは全く意に介した様子はなく、きっぱりと言い放つ。

「カナリアは俺のビジネスパートナーだ。その腕前を舐められたまま仕事をするのは俺にとっても彼女にとっても都合が悪い……違うか、カナリア?」
「まったくその通りです!!さっすがブラッドさん!やっぱり一緒に仕事をしてると気持ちが通じるものですね!!」

 ブラッドの一言で水を得た魚のように機嫌を取り戻したカナリアが、喜色満面にブラッドに走り寄ってひしっ!と嬉しそうに抱き着いた。

「うぐ……ッ」
「ああ!素晴らしきかなパートナぁぁぁ〜〜!!」
「分かったから、さっさと行け……!」

 そのハグにブラッドはどこか居心地悪そうに顔を顰め、さり気なく彼女の肩を掴んで離れるよう手で促す。が、細い体の何所にそんな筋力……もとい包容力が秘められているのか、引き剥がす前にブラッドが鯖折りにされそうな勢いで両碗はぎりぎりと締め付ける。魔物がすぐ先にいるというのに何を夫婦漫才しているのだろうか。
 というかブラッドの顔に羞恥心などの段階を通り越した苦悶が混じっている気がする。魔物さえ碌にダメージを与えられないブラッドを苦しめるとは、恐るべき抱擁だ。

「いい加減に……さっさと仕留めて来い!!」
「了解しました!……よーし!フラストレーション発散を兼ねてはりきっちゃうぞぉー!!」

 鼻歌交じりにテレポットを探るカナリアは、獲物を狩るというよりお洒落道具を探っているような無邪気さがあった。
 マーセナリー特有の剥き出しの警戒心や敵意がなく、本当にただの女の子がピクニックではしゃいでいるかのよう。
 だが――それでもブラッドは知っている。
 彼女がエッジウルフの群れ程度で苦戦するほど軟なヒトではない事を。

 彼女の背を見ながら、ブラッドはまだ言いたいことがありそうに非難がましい目線を送る二人へ向く。

「よく見ておけ。味方の実力を見極めるのも教練のうちだ」
(何だかんだでカナリアさんの事をちゃんと考えてるんですね……てっきり率先して魔物を殺しに行くものと
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